進化天国マレーシアで生まれた「ナシ・ビリヤニ・ガム」

 そして最後は、マレー系の料理として進化したスタイルをご紹介。マレー半島南部ジョホール州が発祥と言われるナシ・ビリヤニ・ガムというビリヤニのスタイルです。ご飯はバスマティライスを使っていること以外は、スパイスも肉汁の脂分もほとんどなく、本家の中東やインド周辺のビリヤニと比べるとかなりあっさりとした味付けです。ナシ・ビリヤニ・ガムは、もともとはマレー系マレーシア人が有りあわせの食材で作るというスタイルから生まれた料理のため、ご飯もスパイスを多用せず簡単に炊く、という簡易的なビリヤニが定着したと言われています。

ナシ・ビリヤニ・ガム。主にマレー系マレーシア人が食べる料理で、さらさらとしたカレーや惣菜を小皿に盛り付け、あっさりとしたビリヤニにかけていただくスタイル。
ナシ・ビリヤニ・ガムの爽やかなカラーのビリヤニ。通常、ビリヤニには多種のスパイスや肉などから出る味や香りがたっぷりと含まれるが、このビリヤニはスパイスの香りは弱く、とてもあっさりとした味。

 ジョホール州を中心に、今ではマレーシア国内にも広まっている食べ方ですが、実はこのスタイルがナシ・ビリヤニ・ガムだとは知らずに食べているマレーシア人も多いほど、マレーシアでは定着している食べ方と言えます。ビリヤニが完全にマレー系の食スタイルに入り込み、独自のスタイルに進化したマレーシアごはんです。

 料理の名前とともにご紹介をしてきた、マレーシアのビリヤニ。実はその定義はとても曖昧で、民族や地域によってその味や作り方もどんどん混ざり、日々変化しているため線引きがとても難しいのです。お店や作る人によって提供スタイルや味が異なることはもちろん、食べているマレーシア人達も、その違いをあまり感じずに「美味しいから食べている」というのが本当のところ。

 そんな曖昧さ、そして味が日々混ざり合っていくのが、マレーシアごはんのおもしろいところ。マレーシアを訪れたらぜひ、自分が食べてみたいと思ったビリヤニの写真を見せて、「こんなビリヤニを食べてみたい!」とマレーシア人に伝えてみましょう。きっとイメージに近いビリヤニ屋さんを紹介してくれることと思います。そして、もしかするとそのビリヤニは、また新たな進化を遂げたスタイルのビリヤニかもしれませんね!

マレーシアのインド系食堂「ナシ・カンダー」の人気チェーン店「PELITA(ペリタ)」。スパイス・お肉と一緒に炊き込むご飯「ビリヤニ」に、好きなピリ辛惣菜やカレーをかけていただくぶっかけごはんが人気。ご飯と惣菜を混ぜながらいただくと、ご飯にしみ込んだスパイスの香りがいっそう引き立ちます! あっさりと食べたい方は白いご飯も選べますよ。店員さんの可愛らしいマレーシア国旗帽とド派手な制服姿も「ペリタ」の名物!「マレーシアごはんの会」事務局やかべっちがビリヤニをいただいて、「スダップ バニャバニャ!(とっても美味しい!)」と最高の笑顔でレポートします!

マレーシアごはんの会 三浦 菜穂子(みうら なおこ)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベントを企画・開催、マレーシア料理店のサポートを行う。バックパッカーとして1998年にマレーシアを訪れて以来、マレーシア全州を周り、訪馬回数は30回以上にのぼる。ガイドブックには載っていない小さな田舎町を訪れ、のどかなマレーシアの人、ごはん、風景を、写真や体験談を通して広めている。
ブログ http://blog.goo.ne.jp/cintamalaysia

Column

マレーシアごはん偏愛主義!

現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。

2015.10.18(日)
文=三浦菜穂子
撮影=三浦菜穂子、古川 音