滋賀県大津市の北部にある坂本は、比叡山延暦寺の門前町として栄えました。日吉大社参道の両側には隠居した僧侶が住む里坊が並び、その穴太衆積み(穴太積みとも)と呼ばれる石垣が続く風情も見所です。

「Bonne riziere(ボン・リジェール)」は、そんな坂本にある小さなパン屋さん。JR湖西線の比叡山坂本駅から琵琶湖に向かって徒歩5分。住宅街を歩いていると、ほのかに薪を燃やした香ばしいにおい。お店の前にも薪が積まれています。

石窯でパンを焼くいい香りがただよう。

 お店は、ご主人・吉田國弘さんがほとんどを手がけたのだそう。その素朴な造りに和みます。ほんのりとスモークの香りが漂っている店内。数個ずつ並んでいるパンを選んで、手提げ篭に入れるセルフのスタイルです。

 吉田さんは、昭和39年生まれ、京都出身。中学生の頃からコックに憧れ、ステーキハウスやホテル勤務を経て東京へ行き、フレンチの有名店数軒で働きます。三重県で自店を構えたことも、祇園にあったフランス人の店で腕をふるったこともあるのだそう。

左:オーナーの吉田さん。
右:お店の外に積まれている薪。
薪窯で焼いた「石窯バゲット」 300円。ミニサイズは200円。

「料理では、食材全部を自ら作るのは不可能。だから、すべてを自分だけでできるパン屋をやろうと思ったんです。子供ができて、ちゃんとした食べ物を与えることを考えるようにもなって」。

 築30年以上の建物を見つけて、自らの手で改装。石窯も自分で煉瓦を積んで1カ月かけて手作りしました。

「不便な所まで、お客がわざわざ買いに来てくれるような、それだけの価値のあるパンを作ろうと思った」。

少しずつたくさんの種類のパンが並びます。

 オープンは2009年7月。当初から「自家製発酵種を使って、石窯で焼く」と決めていたのだそう。パンが並ぶスペースに隣接して、煉瓦の窯場があります。「窯は、すでに3回、ばらして造り変えました」と吉田さん。高温でパンを焼くことや薪を効率よく燃やす工夫を重ねています。「次は、屋根のドームの形を変えようかと(笑)」。

焼き立ての「食パン」 一斤380円。

2015.09.27(日)
文・撮影=そおだよおこ