CREA WEBの好評連載コラム「世界極楽ビーチ百景」で海外の至福ビーチ事情をレポートし続けているビーチライター・古関千恵子さんが、特別篇として国内の厳選ビーチをおすすめします。三浦、伊豆、房総といった首都圏からのアクセスに優れた場所から、沖縄の離島や小笠原といったスペシャルな南国まで、日本が誇る10の絶品ビーチをご紹介!

#004 新城島(沖縄県)

この島には宿泊施設も商店も食堂もない

新城島の上地島。瑠璃色の海に囲まれています。下地島は放牧場になっているそう。

 八重山諸島の新城島は“あらぐすくじま”と読み、地元の方言では“パナリ”と呼ばれています。

 西表島の南東に、周囲約6.2キロの上地島と約4.8キロの下地島が約400メートルの海峡を隔てて浮かんでいます。

 新城島へは定期船がありません。ごく少数の住民はいますが、宿泊施設はもちろん、商店も食堂もありません。観光向けの島ではないのです。現在、新城島へ行くには1日ツアーに参加して、西表島の航路から寄り道してもらうことになります。

彼方に西表島、石西礁湖に面しています。

 私が新城島へ訪れたのは、今から11年前。当時のこの島の公民館館長の島仲信良さんが上地島で迎えてくれました。

 琉球王府時代、この島の人のみ、ザン(ジュゴン)の漁が許され、それを人頭税として納めていたそう。人々はザンの頭蓋骨を丁重に御嶽(うたき)に収め、供養と航海安全を祈ったのだそうです。この御嶽は外部の人間が入ることを禁じ、外側から様子をうかがうだけでも神秘的な気が感じられます。

巨大なガジュマルの木が林立。

 人がめったに訪れない島は、おそらく八重山諸島の原風景を残しているのでしょう。

 西表島を沖に望むアトツマ海岸はまさに無垢の美しさ。波打ち際から陸へ向かって真っ白な砂浜、サンゴの欠片、ビーチロックと続き、背後はアダンやモンパの木を載せた琉球石灰岩の巨岩に守られています。クイヌパナ(遠見台)から見下ろしたサンゴの岩がぽこぽこと浮かぶ海の光景も印象的。そして、ふどぅまの海岸近くには、なんと巨大なガジュマルの並木も! 手つかずの沖縄の森は、こうなるのか、と目を見張るばかりです。

2015.07.25(土)
文・撮影=古関千恵子