緑の森で姿を見せない小人「メネフネ」に出会う

 地球のなかから吹き出した溶岩によって、太平洋の真ん中に突如姿を現したハワイ諸島。いちばん近い大陸といえば、3000キロメートル以上も離れたカリフォルニア半島で、陸地が生まれてから一度も大陸に接していないため、ハワイの自然は外から受ける影響が少なく、ハワイでしか見られない植物も数多い。

ここはアメリカ合衆国で唯一の熱帯雨林気候帯。

 ハワイ火山国立公園内にあるナーフカ(サーストン溶岩洞)は、溶岩の流れがつくったトンネルで、ハワイ島ならではの自然を感じることができる、JINさんおすすめのスポットのひとつだ。

左:シダ植物も生い茂る。
右:トンネルの入口。

 サーストン溶岩洞は、約500年前に流れた溶岩が固まってできたトンネル。ハワイ島の溶岩は粘着性が弱く、サラサラと流れるタイプの溶岩のため、溶岩が流れきったあとにこのようなトンネルが残ることがあるのだ。トンネル内に足を踏み入れると、ところどころに天井から細長いものがぶら下がっている。よく見るとこれは木の根。ハワイ島を覆う溶岩は水はけのいい地質のため、トンネルの上の植物たちは、生きるための水分を求めてトンネル内に根を伸ばすのだそう。

トンネル内部は照明があり、足元を照らしてくれる。

 トンネルを出ると、ふたたび緑が茂る熱帯雨林の森をたどる。

国立公園ではハワイ固有の動植物を守ろうとさまざまな努力がされている。

 「ハワイは陸地と接したことがないので、ここに植物が繁茂するのには、種子が“3つのW”によって運ばれた以外にはないのです。その3つというのが、Wind(風)、Wave(波)、Wing(鳥の羽)。それ以外のものは外来種で、人間によって持ち込まれたものなんですよ」とJINさんは言う。そして3つのWのいずれかによってこの地にたどりつき、長い年月をかけて独特の進化を遂げたハワイ固有の動植物たちも、いまでは外来種や外来の動物たちによって姿が見られなくなっているという。

 溶岩洞を抜けたところでJINさんが、「あそこに、メネフネさんがいるよ」と教えてくれた。指さすほうを見てみると、15センチほどの細長い草の葉が、つむじ風に巻かれたようにくるくると回っているのが見えた。この「メネフネ」というのは、ハワイに伝わる伝説の小人のこと。とても働き者で、一夜のうちにヘイアウ(神殿)や用水路を完成させるほどなのだとか。「メネフネさんは恥ずかしがり屋だから、姿は見せないんだけどね」とJINさん。サーストン溶岩洞に出かけるときは、ぜひ足元でかわいらしく揺れる草を見つけてほしい。

草が揺れた場所の近くにあった、苔むした倒木には小さな穴が。メネフネさんの家だったりして。

2015.05.23(土)
写真提供=ハワイ州観光局