白亜の古城と大聖堂が見守る美しい街へ
冒険と発見に満ちた音楽フェスティバル、「ラ・フォル・ジュルネ」。日本(東京、金沢、新潟、びわ湖)のほか、世界各国で開催されるこの一大音楽イベントの本拠地は、フランスのナント。フェスティバル開催中は、世界中からクラシック通をはじめ、多くの音楽ファンがこの街を訪れる。
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ナントが位置するのはフランス北西部。ブルターニュ半島の付け根、ロワール川の河口付近に開けた街だ。パリからTGVで約2時間15分、国内やヨーロッパ各国を結ぶフライトも充実し、各地からのアクセスも抜群。近代的な都市にして緑と公園が多く、タイム誌で「ヨーロッパでもっとも住みやすい都市」に選ばれたこともある。
ナントは16世紀中頃まで、ブルターニュ公国の中心地でもあった場所。市内には、古城や聖堂など美しい歴史的建造物が点在している。中世の建物がしっくりと都会に溶け込む街並みは、旅情もたっぷり。地図を片手にのんびりと散策するのが楽しい。
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ナントの象徴といえば、旧市街の中心部にあるブルターニュ大公城。ここは1598年、新教徒の信仰を認める「ナントの勅令」が発布された場所なので、世界史の教科書で習った記憶もあるだろう。さまざまな歴史の舞台となったこの城は、15年におよぶ大改装を経て、2007年にふたたび美しい姿を披露。花崗岩と白い石灰土でできた白亜の城は、内部をゆっくり見学することもでき、訪れた人を中世の世界へと誘っている。
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右:美しいお城を見て、歴史をおさらいしたくなったら、城内にある歴史博物館へ。
ブルターニュ大公城に劣らず存在感を放っているのは、ナント・サン・ピエール・サン・ポール大聖堂。1434年に建築が始まり、457年後に完成した。完成にこれほどまでの年月を要したのは、火災や空襲に繰り返し見舞われたうえに、ブルターニュ公国のジャン5世が壮大な聖堂の建築を望んだためといわれている。翼廊にあるのは、1488年に死去したブルターニュ公フランソワ2世と、その公妃マルグリット・ド・フォアの白い墓。その墓に施されたルネサンス様式の装飾は、まれに見る傑作ともいわれている。
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2015.04.29(水)
文・撮影=芹澤和美