「料理は1分で死ぬ」といわれるその理由とは?
右:マッラコニスフィバウスという長い名前のパスタ。
私たちプロカメラマンの間では「料理は1分で死ぬ」といわれている。
そう、時間が経つにつれどんどん朽ちていってしまうのだ。例えば親子丼の卵の色は鮮やかな黄色からどす黒い黄色へ変わってしまうし、ラーメンの上に置かれた海苔は湯気で華麗に踊らされた後、ベロベロ疲れた海苔になってしまい、カレーのルーの表面はあっという間に凝固する。そんな料理写真は瞬間を捉えるスポーツ写真に似ているといっても過言ではないのだ。
こんな風にいうと料理写真は難しいなあ、と敬遠されるかもしれないが、これは私たち写真で食べているプロの話である。旅先で撮る料理写真はもっとその場の雰囲気を楽しみながら撮ってほしい。
右:トローネは蜂蜜と卵白だけで作ったお菓子。
そこで5つのコツを教えると、まず第一に注意してほしいのは光とホワイトバランス。日中、窓やテラスがあるレストランでは窓際のテーブルを選ぶべし。これはストロボを使わずに自然光で撮ると綺麗に簡単に撮ることができるためで、自然光が入るテーブルを選ぶとよい。
しかし夕食に行くレストランはすでに陽が落ちて自然光はなく、店内の照明だけで撮影する羽目になる。その場合はホワイトバランスの設定をこまめにかえるべし。西洋系の素敵なレストランはタングステン光(いわゆる電球光)が多く、中華系レストランはコンビニのようにバッチリ見える白色蛍光灯が多い。そこでカメラのメニュー設定からWB(ホワイトバランス)をオート、太陽光、電球光、蛍光灯、日陰などに変える必要がある。
旅先のレストランで料理を撮ったら料理がオレンジ色になってしまった! という経験をした方も多いと思う。それは昼間、風景などを撮っていた時と同じWBの設定でレストランに行き、そのまま電球光の下で撮ってしまったから。よってWBを変えて撮影する。
そして第二に、料理が出されたら、料理のポイントを決めるべし。ポイントとはパスタの上にちょこんと載ったバジルの葉だったり、ビーフステーキの表面の美味しそうな肉汁だったり、お皿の真ん中でツンとたったエビの尻尾だったり。自分ならではのポイントを決めることだ。
第三に、カメラアングルの高さを料理によって変えるべし。
平らなピザなどの料理はアングルを高い位置へ、かき氷などの高さのあるものはアングルを低くするなど、料理の形態によってカメラアングルを決める。
2015.04.26(日)
文・撮影=山口規子