世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第52回は、たかせ藍沙さんが日本三名瀑のひとつ、袋田の滝で知られる茨城県大子町を満喫した旅を楽しくレポートします。

日本三名瀑って全部言える?

山の中に現れた長さ276メートルのトンネル! こんなに長いトンネルを歩くことは滅多にできないので、一気に冒険気分に。

 茨城県の大子町(だいごまち)に行ってきた。何やら楽しいコト、美味しいモノがたくさんあるらしいと聞いて。まずは、この町最大の観光名所で、日本三名瀑のひとつ「袋田の滝」へ。三名瀑の他のふたつは、日光の「華厳の滝」と熊野にある「那智の滝」。圧倒的な知名度を誇るこの二滝に比べて……、ごめんなさい、今回訪れるまでこの滝のことは知らなかった。いったいどんな名瀑なのだろうか。

トンネルの途中には違う角度から袋田の滝を眺めることができる観瀑台がある。

 そんなことを考えている間に乗っていた車が停まった。ガイドの方の案内で観瀑台へと歩を進める。するとそこに現れたのはトンネル。しかもかなり長い。276メートルもある。ちょっと不安になる長さだけれど、滝を遠くから見ることができる小さな観瀑台や、吊り橋に繋がる岐路があったりして、ちょっとした冒険気分を味わうことができるようになっている。そして、トンネルの先にあったのは、予想外のエレベーターだった! このエレベーターは44メートルもあり、滝全体を見ることができる観瀑台まで一気に昇れるのだ。

トンネルの先にあったのはエレベーター。ここから一気に44メートル昇る。右側でガイドの方が説明してくださっているのは四季折々の滝の写真。期待が高まる瞬間だ。

 エレベーターを降りると大量の水が流れ落ちる爆音が聞こえる。2008年に造られたこの第2観瀑台には3つのデッキがあるが、お勧めは一番上の第3デッキ。袋田の滝が日本三名瀑に名を連ねる理由がそこから見てとれる。滝は高さ120メートル、幅73メートルにわたって、4段の段差を流れ落ちる。その壮大な光景は「名瀑」と呼ばれるにふさわしかった。どうして今までこの滝のことを知らなかったのだろうと、今さらながらに後悔しきり。

左:上のデッキから望む滝の全景。滝が4段になっているのがよく見える。右上の木々がかすかに紅葉し始めていた。
右:第1観瀑台からは、幅73メートルの滝を真正面に見ることができて圧巻だ。

 そして、ふたたびエレベーターで降りて向かったのは、1979年に造られた第1観瀑台。こちらは、4段目の流れを真正面から、間近に望むことができる。幅73メートルの岩肌を流れ落ちる大量の水は圧巻だ。マイナスイオンたっぷりな滝の飛沫が飛んでくる。この滝は「四度の滝」と呼ばれていて、4段の滝ということと、四季ごとに美しい姿を見せてくれることでも知られているという。春の清々しい新緑、夏の強い日差しが投影する虹、秋の色鮮やかな紅葉、そして、冬には滝のほとんどが凍って白銀の滝となり、訪れる人を楽しませてくれるのだ。

トンネルの途中から続いている吊り橋。中央奥に見えるのが3階建ての観瀑台。

 しばし滝に目を奪われていたが、ふと我に返ってデッキに目をやると、「たき丸」というゆるキャラの看板が。よく見ると、帽子が袋田の滝になっている! しかも違和感がない(笑)。滝だけじゃない。春のサクラ、秋のモミジ、りんご、鮎と、大子町の名物が欲張りなほど載っているのにかわいいのだ。町の観光商工課の方に伺うと実物(正確には着ぐるみ。笑)もいるのだとか。「それなら、会いたい!」とダメもとで言ってみたところ、「何とかしましょう」とのお返事。「やったー!」。翌日に期待して滝を後にしたのだった。

ゆるキャラ、たき丸くんを発見。盛りだくさんの帽子にご注目あれ。

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2014.09.23(火)
文・撮影=たかせ藍沙