武田百合子は、作家である夫泰淳との暮らしを綴った『富士日記』で脚光を浴びた。書き留められた日々の献立を見ると、夫婦で、頻繁にカレーを食べている。

 別著『日日雑記』でも「(年老いて)食べられなくなったときは、もうおしまいだ」と絶望するほど、カレーが好きだった。

 赤坂の自宅から歩いてすぐの場所に、洋食屋「津つ井」があった。日本人好みの味つけで知られるこの店に百合子は、泰淳や娘の花と連れ立って訪れ、トンカツ、エビフライ、ビーフシチューなど定番メニューを何でも食べたという。そして、やはりカレーもよく注文した。

 三代目女将の筒井文路さんが「武田さんや向田邦子さんなどもよくいらして、カレーは当時から変わらぬ味です」と語る逸品。食べた瞬間に、芳醇な甘みとコクが、口の中に広がった。

津つ井

所在地 東京都港区赤坂2-22-24泉赤坂ビル1F・B1
電話番号 03-3584-1851
営業時間 [ランチ]11:30~15:00(L.O. 14:30)、[ディナー]17:00~22:00(L.O. 21:30)
定休日 土・日曜、祝日、年末年始

※初出:文藝春秋 2024年7月号
※記載内容は変更されている場合もあります