グルテンフリー発祥の地・米国でも疑問視
しかしながら、グルテンを避けるよう医師から指示されている場合ですら、治療の原則は「必要最小限の除去」です。なぜかと言うと、グルテンを避けすぎると、他の成分まで摂取できなくなるからです。
小麦に限らず、穀物はどれも食物繊維が豊富です。とくに小麦を丸ごと挽いた全粒粉には通常の小麦粉より4倍多く入っており、100g食べるだけで1日に必要な量の半分以上を摂取できます。食物繊維は腸の善玉菌の餌であり、悪玉菌が作る有害物質や体内の余分なコレステロールの排泄を促す作用があります。
上の図に示すように、日本人1人1日あたりの食物繊維摂取量は、約60年で3分の2まで減りました。小麦、大麦、玄米、雑穀など、穀物の摂取量が3分の1になったからです。このことは、とくに日本において糖尿病増加の背景になっています。
また、グルテンフリーによって総コレステロール、空腹時血糖、そして体格指数(BMI)が上がることも報告されています。BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割って算出し、18・5以上25未満を普通体重と判定する肥満の国際尺度です。「グルテンフリーでダイエット!」という記事を見かけることがありますが、実際は太るわけです。心筋梗塞をはじめとする心臓病の発症率が高まることを示した論文もあります。
そして、全粒粉にはカルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛などのミネラル、ビタミンB1、B2、B6、ビタミンDをはじめとするビタミンも多く、さらにはグルテンそのものも質のよい植物性蛋白質です。植物性蛋白質はコレステロールや中性脂肪の数値を下げ、脂肪の蓄積を抑えます。また、肉などに含まれる動物性蛋白質が脂質を一緒に摂取しがちなのとくらべて、穀物であれば脂質は少ししか含んでいません。
グルテンフリー発祥の地、米国の専門家も、グルテンフリーが一般の健康な人に特別な効果をもたらすとは考えにくいと述べています。とりわけ日本人は、穀物から食物繊維と植物性蛋白質の摂取を心がけるのが大切です。
» 【後篇を読む】「ヨーグルトで体調が悪くなる?」「断食の効果は…」日本人の腸内環境は欧米人と何が違う?《腸内細菌にも人種差が》
奥田昌子(おくだ・まさこ)
京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。医学部卒業後、博士課程に進み基礎研究に従事。健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察にあたる。海外医学文献と医学書の翻訳も行う。現在は産業医を兼務し、ストレス対応を含む総合診療を続ける。著書に『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)など多数。

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