「お前ら、見なかったのか……」

 一週間後。

 一同はあの日の出来事や不気味な男のことを誰にも相談できないもどかしさを抱えたまま、自治会主催の野球大会に参加していました。というのも、探検メンバーのひとりだった野球好きのFくんに誘われる形で皆応援として集まっていたのです。

 あの日の出来事はもう忘れよう……皆一様にそう思っていたのか、その日は誰も空き家の話題を出さずに、ワイワイと冗談や応援に熱を入れていました。

「……え、う、うわああぁー!」

 試合も中盤に差し掛かった頃、突然、バッターボックスに入ったFくんがバットを放り投げ、叫びながら走り去る事件が起きました。

 試合は急遽控えのメンバーを代打に出してことなきを得たそうですが、試合後にFくんが学校を数日休んだことで、Aさんらはあの奇行の背景には空き家での出来事が関わっているのでは、との疑いを強めていました。

 そしてその疑いは、友人たちとFさんの家にお見舞いにきたとき確信に変わったのです。

「お前ら、見なかったのか……」

 近隣住民が集まった賑わいの中。

 野球場奥の金属フェンスの向こうに、あの男が立っているのが目に入ったというのです。

「そいつ、俺の方を見てからさ……急にビニール袋取り出してかぶったんだ」

 青ざめながら語るFくんを遮るように、Aさんらは『いるわけがない!』と怒鳴りつけると、逃げ去るように彼の家を後にしてしまいました。

 その後、Aさんたちの間であの空き家の話題が出ることはなく、Fくんは翌年に転校。Aさん一家も高校に上がる頃にはその新興住宅地を離れました。

 以来、Aさんはビニール袋系全般の擦れる音を聞くと、あの日の出来事がフラッシュバックし、怖くて仕方がなくなってしまった、というのです。

» (後篇に続く)

次の記事に続く 深夜1時の作業員と黒い袋――出張先のホテルでつながった...