ただただポツンとある空き家
「そのエリアはどこも家族連れが入っていて、いつもワイワイと騒がしかったんですけど、その一角にいつまで経っても人の住まない一軒の“空き家”がありましてね……」
「売り家」などの看板や貼り紙がされるでもない、ただただポツンと建つその空き家。
『あの空き家、実は鍵のかかってない窓があって、そこから入れるらしい』
同じ住宅地出身の同級生も多かった学校ではいつしかそんな噂が広がり、あるとき探検しに行こうということになったのだとか。
そうして学校が春休みに入ったとある平日の昼間。Aさんら数人の小学生たちは例の空き家に忍び込むことになったのです。
しかし、見慣れた机に見慣れたエアコン、部屋の配置もほぼ自分たちの家と変わらないその内装を見て、小学生たちの好奇心はあっという間にしぼんでいきました。
「なんだよ、何もないじゃん」
「つまんねー。帰ってAの家でゲームしようぜ」
「てか、もう夕方じゃん。こんな時間じゃゲームできないよ、早く帰らないとママに怒ら……」
ふと、Aさんは部屋に備え付けてあった時計を見て言葉を詰まらせました。
慌てて部屋の窓辺に駆け寄り、閉まっていた紺色のカーテンをバッと開けると、外がオレンジ色に染まっていたのです。
