今や人気ホラー作家たちがこぞって怪談のリライト記事を投稿するほどの人気を獲得している怪談ネットラジオ「禍話(まがばなし)」。2016年のスタートから実に10年の節目を迎えた生配信サービス「TwitCasting」の人気番組ですが、語り手であるかぁなっきさんが披露する実話怪談のキレは未だ衰えを知りません。

 今回はそんな禍話から、エレベーターが使えない格安マンションに引っ越した女性が体験した奇妙なお話をご紹介します――。

» 前篇から読む
» 怪談特集を見る


「そのエレベーターは使えませんよ」

 翌朝。Fさんはシャワーを浴びながら昨日の物音について思いを巡らせていました。

 あの音、どうして行ったり来たりしていたのだろう。それに、そもそもエレベーターの稼動音が部屋の中にまでしっかりと響くものなのだろうか……。

 いてもたってもいられなくなったFさんは身支度を済ませると、外廊下のエレベーターを見に行くことにしました。

【下記の期間、点検作業のためエレベーターは停止いたします。】

 そこには以前と変わらぬボロボロの貼り紙がありました。

「……どうなってんの」

「初日にお伝えしていたけど、そのエレベーターは使えませんよ」

 背後から聞こえた人の声に飛び上がってしまったFさん。

 声の主は管理人さんでした。

 Fさんは、不可抗力とはいえ不躾な叫び声をあげてしまったことを弁明すると、そそくさとその場を離れるため、行くつもりのなかったコンビニへ向かうことにしたそうです。

 途中、管理人さんがその場を立ち去る足音が聞こえず、自分の背中をじっと見つめられているような視線を感じたそうですが、振り返ることはしませんでした。

 その日以降も、不定期にエレベーターの稼動音が聞こえてきました。

 それは必ず住民が寝静まった深夜にだけ起こり、何度も上や下の階を行ったり来たりしたあと、どこかの階で停まるのです。

 けれど、Fさんの住む3階に停まることは決してありません。

次のページ 隣室から聞こえてきた“言い合い”