隣人の部屋の奥に見えたのは…
翌日。
Fさんは菓子折りを持って、角部屋だった左隣の隣人を訪ねていました。
幸いにも右隣が空き室だったこともあり、このお隣さんと良好な関係を築ければ勝ったのも同然、そんな気持ちでインターホンのボタンを押したのです。
「はーい」
ひょっこりと顔を出したのはFさんより幾分年下のHさんという女子大生で、柔和で愛想の良い笑顔を返してくれました。
ドタバタして挨拶が遅れたことを謝りつつ菓子折りを渡したとき、ふと廊下の奥に目がいきました。
リビングへ続くすりガラスの扉は閉められていましたが、テーブルを囲んで数人が静かにこちらを見ているような影が見えたのです。
休日に大学の同級生たちと宅飲みをしている最中だったのかな……邪魔をしてしまったと焦ったFさんは、手早く話を切り上げると隣人の部屋をあとにしました。
飲み会中だったのに笑顔で挨拶してくれたHさん。
「はぁ~……」
こういう目端の効かなさが男と長続きしない原因なのかもなぁ、自傷気味にため息を漏らしたFさんはあることに気がつきました。
飲み会中のお隣から全く物音がしないのです。
てっきり自分が戻ったあとに「お隣さんの話が長くてさぁ~」などと話題に出されるのを覚悟していましたが、この予期せぬ静けさには驚かされました。
「このマンション、防音性能まで高かったとは……」
しかし、そんな喜びとは裏腹にFさんはその日の夜、奇妙な物音で目を覚ますことになったのです。
