毎日悲しくなって、毎日嬉しくなって。
ーー以前のインタビューで、「大好きなアートに触れたり、いろんな人とフェミニズムや政治について会話をしたい」とお話しされていましたが、そういった部分は実現しましたか?
山本 そこも大きな目的として行ったんですけど、現実はそんなに簡単じゃなくて、結果から言うと、自分の理想とするところまで到達することはできませんでした。
生活をする難しさと、知らない言語を学ぶことの壁の大きさを感じてすごく辛かったです。何をしている瞬間も私にとってはチャレンジで、休む暇が無い感覚でした。毎日挑戦して、毎日恥ずかしい思いをして、毎日出来ない自分に悲しくなって、毎日何かができるようになって嬉しくなって。そうやって毎秒感情に振り回されていたのが結構しんどかったですね。でもそれは、私が毎日毎秒真剣だったからだと思っています。全部の感情にぶち当たりながらも、助けてくれる人は誰もいない。そんな環境下でチャレンジをやめたら、ただ止まるだけなんですよね。そんな崖っぷちにずっと立たされているのが本当に辛かったです。
ーー自分の感情に素直に行動できる奈衣瑠さんだったら、そんな辛い環境下に居続けるのではなく、帰国するという選択も取れたのではないかと思うのですが、そのなかでも居続ける選択を取ったのはどうしてですか?
山本 もう根性でしかないんですよね(笑)。誰かと比べていたわけではなく、自分に対してすごく負けず嫌いで、努力した分の成果を自分自身が知りたかったんです。「頑張ったんだったら、お前自身に見せてやろうぜ!」っていう思いがずっとあって頑張り続けていたのかもしれません(笑)。
ーー「根性」は大きなテーマですね。他者に向けられる根性はスポ根みたいで良くないですけど、自分が自分に向けて持つ根性が大事なときってありますよね。
山本 根性は正しい方向に向けた方がいいですよね。自分自身に向けることで、そこで得た結果も自分のものになっていくし、そうやって木の幹がどんどん強くなっていくと思います。
そのおかげで私も、「行ってみないと何も分からない」っていうことを本当にそうだなって思えるようになりました。調べて大抵のことは出てくるし、正しいかもしれないけど、それはあくまでも一つの答えでしかないし、自分がどう感じるかは調べて出てくるものだけじゃないんですよね。私は今回の海外生活で、自分が何かを習得するのに必要なペースを知りました。それは私にしか分からないことであって、やってみないと分からなかったことだなと思います。
ーー慣れ親しんだ場所ではない場所に移り住んだときに、自分を取り戻したり、守ったりするために必要だったことはなんですか?
山本 常にチャレンジしていないといけない環境下で過ごしていると、自然と必要なものだけが見えてくるようになったんです。私にとってはそれが美術や自然でした。辛いときはいつも公園に行っていて、「公園だけは私のことを許してくれる」って感じていました。自分が大事にしているものを思い出せて、自然からもパワーを得て、私はどこにいても自然や晴れている太陽が必要なんだなと改めて気づきました。
美術に関しても、自分が憧れていたものをいつでも無料で見れる環境っていうのが本当に支えになっていたんです。生きているものを直接、今あるうちに見れることのありがたさも今回行って改めて感じていました。
ーー自分にとって本当に必要なものを認識したことで自分を守れていたんですね。
山本 それと、きっと慣れ親しんでいない場所にいたからこそ、自分自身をより見つめていて。その結果だと思うんですけど、自分が弱くなったり、強くなったり、本当に小さな動きを感じられるようになったんです。うまくいっていないときは弱くなるし、うまくいったときは強くなる。つまり、「今後は自分で自分の感情のハンドルを握れるってことだ」って気付けたことが、自分を守ってくれていたなと思います。
