ダウンタウンでタコス三昧のツケは……

 メキシコシティで一番食べたものは、当然ながら、タコス。ひとくちにタコスといっても、こじゃれたダイニングバーのタコスから立ち食いタコスまで、スタイルはさまざま。日本人の私には、正直、それほど味が違うようには思えないのだが、値段は店によってずいぶんと違う。

高級住宅街にあるタコス屋は器もお洒落(左)。トッピングもバリエーション豊かなファミレスのタコス(右)。

 1日目は、「フリーダ・カーロ・ミュージアム」近くの、いかにも富裕層が集まりそうなダイニングバーでタコスとメキシカンビール。器も盛り付けもお洒落。2日目は、チェーンのファミリーレストランで、アボカドソースたっぷりのタコスセット。塩分やカロリーが表記してあるメニューといい、サービスの仕方といい、日本と同じ。そして最終日にいよいよ挑戦したのが、屋台のタコス。屋台とはいえ、火を通してあるものなら、お腹をこわす心配もないだろう。

 旧市街の地下鉄駅の周辺には、たいてい、屋台のタコス屋街がある。漬けこんだ豚肉をローストしたパストールや、牛肉を炒めたスアデーロ、チョリソーなどが店の前に並べてあって、好みでサルサソースをかけたりライムを絞ったりして食べる。

なかにはセルフサービスでトッピングするほったらかしの屋台も。具は取り放題。
鉄板の上で焼いた肉を、タコスに挟んで食べる。香ばしい匂いが食欲を誘う。

 どの店にしようか迷ってウロウロしていたときに、ふと目に留まったのは、やけにおじさんたちが多い屋台。日本でも、おじさんがたむろしている店は決まって、安くておいしいものだ。私もおじさんにならって、タコスをオーダー。隣にいるおじさんが飲んでいるおいしそうなスープも頼んでみると、オックステールスープのような味で、これがすごくおいしい! メキシコシティで口にしたものの中で一番おいしかった。ドラム缶で沸かしているんだろうな、ちょっとぬるいかな……と思いつつ、雰囲気にのまれてうっかり飲み干してしまった。

お洒落タコスの30分の1の価格の屋台タコス。この屋台はやけにおじさんが多かった。

 屋台を後にして、帰りは18時間のフライトで日本へ帰国。自宅に帰って2分後、腹痛と気持ち悪さに襲われ、2日間寝込み、1週間はほとんど何も食べられなかった。病院の診断結果は、「食あたり」。どう考えても、最後の最後に飲み干したあのスープが原因だろう。でも、あれだけおいしいメキシコの味を満喫できたのだから、我が旅に、悔いはない。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

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2014.07.15(火)
文・撮影=芹澤和美