「私はこの水玉ひとつで立ち向かってやる」

 日々の食事にも不自由する窮乏のなかで絵画制作に没頭。そこから生まれたのが、キャンバス全体を微細な網目模様で埋めつくす『無限の網』の連作だった。1959年、ニューヨークでの初の個展を開き、『無限の網』を発表。ミニマルな手法で描かれた絵画は新鮮な驚きをもって迎えられた。

 このとき草間の才能にいち早く着目したのが、後にミニマル・アートの代表的作家となるドナルド・ジャッドだった。美術批評も手掛けていた彼は、草間の作品について「その一筆一筆には、どんな小さな空間でも大いなる確信と強度がある」と評した。※

 こうしてニューヨークでの活動の足掛かりを築いた草間は、次第に絵画の枠にとらわれない多彩な表現を試みるようになっていく。独自の強迫観念的なイメージは、平面から立体、さらには空間へと拡大した。

 「私はこの水玉ひとつで立ち向かってやる。これに一切をかけて、歴史に反旗をひるがえすつもりでいた」と草間はその頃を振り返る。

※園田清佳著『草間彌生 前衛の軌跡』(信濃毎日新聞社)より

◆インタビューはまだまだ続く。世界平和についての強い関心、そして、これからの作品のアイディアに関して語ったこの続きは、CREA7月号で掲載中。
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2014年、草間彌生の世界&国内ツアー
【アジアツアー】

「KUSAMA YAYOI, A Dream I Dreamed」
・台北 Taipei Fine Arts Museum 2014年12月~2015年2月
・ニューデリー National Gallery of Modern Art, New Delhi 2015年3月
【ラテン・アメリカツアー】
「Yayoi Kusama obsesion infinita」(永遠の強迫観念)
・サンパウロ Instituto Tomie Ohtake 開催中~2014年7月27日(日)
・メキシコシティ Museo Tamayo, Mexico City 2014年9月25日(木)~2015年1月19日(月)
【国内ツアー】
「永遠の永遠の永遠」
・秋田市立千秋美術館・秋田県立美術館 2014年7月11日(金)~9月7日(日)
・松坂屋美術館(名古屋) 2014年9月13日(土)~10月13日(月・祝)

草間彌生 (くさまやよい)
1929年長野県生まれ。前衛芸術家。小説家。10歳の頃より水玉と網目模様をモチーフに絵を描き始める。57年の渡米を契機に才能を大きく開花させ、多彩な前衛的作品を手掛ける。73年に帰国後は東京を拠点に世界各地で作品を発表し続けている。

2014.06.27(金)
撮影:森本美絵
文:鈴木布美子

CREA 2014年7月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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