日本は安全保障の面でアメリカ依存を脱却できるとは思わないが、アメリカの保護主義について「日本もそうだ」と言う必要はない。むしろ自由貿易の旗を掲げるべきだ。そうやって、ヨーロッパや中国との関係において、アメリカとの差を際立たせることが必要だ。

(略)

 日本の国会では、(略)、国のために短期、中期、長期にどういう方向でいくかということを考えてもらいたい。もう少し全体を見てもらいたい。大きな構図の中で考えないと間違える。最初に日本が相手にされたことを多として進めるのは好ましくない。淡々とやるべきだ。

 田中の言う「大きな構図」とは何か。それは、日本がルールに従った自由貿易の枠組みを提示し、その枠組みに「中国や韓国やインド、それから台湾も入れる。日本は自由貿易をコアに貿易を拡大していく。そうしていると、EUも『入れてほしい』となっていく。大きなチャンスがある」という構想である。

 そのような構想をアメリカは不快に思うのではないかという懸念に対し、田中は「仮にアメリカがそう思っても、『それがどうした』『自由貿易の拡大が悪いことですか』と言えばいい」と一蹴している。

 インタビューの最後に、田中は、次のような見通しを示している。

 トランプは、過去の合意や国際的な多国間の協調を無視して進めることは、自国の利益にならないことを知らないといけない。それ次第で、中間選挙の勝敗が変わってくる。4年後に「トランプ的な人」が引き続き大統領につくかどうかにつながってくる。他国が何と言おうと彼の認識は変わらない。何が変えるかというと、すでに申し上げたように経済指標だ。トランプは商売人だから。

問題は関税ではなく、通貨である

 トランプ・ショックを受けての田中均の見解は、次のようにまとめられるであろう。

 第一に、ルールに従った自由貿易という既存のリベラルな国際経済秩序は、アメリカを含む世界各国に利益をもたらすものであり、これを堅持すべきである。

2025.08.07(木)