その上で、田中は、トランプ政権による関税措置について「関税政策というだけではなく、一種の統治革命」だという見解を示している。

 統治革命とは、どういうことか。

 通常の外交は「複雑なコンテクスト(状況)の中で、短期的、中期的、長期的な利益を考えてやる」ものであるが、トランプは、既存の体制や規範の積み上げを無視し、自分の判断だけで、短期的な利益のために「取引」をする。これは「一種の統治革命」だと田中は言う。

 日本は対米関税交渉にどう臨むべきかと問われた田中は、「無理に妥協せず、日本の利益にかなう合意をつくればいい」と応じている。田中は、トランプのやり方は経済難を引き起こして失敗するので、長くは続かないと見越しているのである。

 いずれトランプの理不尽な行動は、どこかで挫折する。中国に高関税をかけてアメリカ経済が成り立つわけがない。アメリカ株は下がり、国債価格は落ち、金利は上がる。ドルの信(ママ)は落ちる。理不尽な政策を撤回させるには、アメリカの経済指標が変化するしかない。他の国がアメリカを叩いても、それで変えるようなトランプではない。

今のアメリカは過去のアメリカではない

 田中は、アメリカはもはや覇権国家ではないことに注意を促し、かつてのようにアメリカの指導力に依存することはできないという判断を示す。

 今のアメリカは過去のアメリカではない。過去には、圧倒的な力を持ち、軍事や経済だけではなく世界を率いる指導力があった。今は指導力がどんどん落ちている。

(略)

 ヨーロッパでは首脳が集まり、いかにアメリカ依存を減らすか議論している。経済だけでなく安全保障面でもだ。ロシアが脅威として存在する中で、ヨーロッパにとってみれば一種の生き残りの問題であり、自分たちで守るしかないとなってきている。

 アメリカの覇権が終わりを迎える中、ヨーロッパは、軍事的にアメリカから自立することを模索し始めている。それでは、日本は、どうすべきであるか。

2025.08.07(木)