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母親が生き方を変えたとしても、子どもは…

 あなたの堅実な生き方は日本という地理環境に適応して生き延びられる戦略です。確かに、ときには派手な挑戦を楽しんで生きる人を見て、うらやましくなることもあるかもしれません。

 しかし、だからといって、「失敗を恐れずチャレンジしよう、後悔しない人生を送るために」などと安易に勧めることはできないのです。

 さらにいうならば、たとえお母さん自身が生き方を変えたとしても、お子さんは自分の脳が求める戦略を取ってしまうでしょう。

 もしかしたらそこにこそ不安を感じてしまうかもしれませんが、お子さんにあれこれ指示する以前に、あらゆる可能性を想定して、失敗してもリカバリーできるよう準備してあげることができるというのも、あなたのような方が持つ卓越した能力の一つと言えるのではないでしょうか。

悩脳(のうのう)と生きる 脳科学で答える人生相談

定価 1,650円(税込)
文藝春秋

失敗が怖い、恋ができない、SNS疲れ……。ままならない悩みを科学目線で解明する「週刊文春WOMAN」の人気連載を書籍化。読者と有名人の悩みに答えるほか、森山未來、二階堂ふみらとの対面相談も収録。

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中野信子(なかの・のぶこ)

1975年東京都生まれ。脳科学者、認知科学者。東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授、森美術館理事。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修ア。医学博士。2008年から10年までフランス国立研究所ニューロスピンに勤務。著書に『サイコパス』(文春新書)、『新版科学がつきとめた「運のいい人」」(サンマーク出版)、『新版人は、なぜ他人を許せないのか?」(アスコム)、『児の脳科学』(講談社+a新書)など。「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)他テレビ出演も多数。

次の話を読む「死にたい。それは、本当は生きたいということです」 中野信子が脳科学から伝えたい<“死”がよぎったときに気にしてほしいこと>

2025.08.08(金)
文=中野信子
写真=平松市聖