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――これまでアクションのイメージがなかったテレンスさんに、『トワイライト・ウォリアーズ』『スタントマン 武替道』と連続して、アクション映画の出演オファーが来たときの感想は?

 これはもう……運命だと思っています。正直、私もここまでアクション映画に関わるとは思っていませんでした(笑)。でも、『トワイライト・ウォリアーズ』『スタントマン 武替道』と続いた後に、(香港で大ヒットした映画『コールド・ウォー』シリーズの前日譚である)『寒戦1994』(原題)に出演し、このあいだもアクションパートの多い新作を撮り終えたばかりです。そう考えると、人生は自分の思い通りにならないと思いましたし、だからこそ面白い。それもあって、運命だと思っています。

――若手スタントマンのロン役を演じられた『スタントマン 武替道』では、『トワイライト・ウォリアーズ』とは異なるアクションを学ばれたかと思います。

『トワイライト・ウォリアーズ』で演じた信一は、どちらかというと相手を殴ったり、やっつけることが多かったと思うんです。でも、『スタントマン 武替道』のロンは文字通りスタントマンですから、相手に殴られたり、やっつけられるんですよね。そうすると、自然と受けのアクション、リアクションが多いので、まったく違いました。

自らが生み出す恐怖心との戦い

――具体的なリアクション訓練について教えてください。

 クランクインの数週間前から、実際のスタントマンの方の指導のもとで、相手に殴られるときにどう反応するかということを、一生懸命練習しました。一口にリアクションと言っても、ときにはリアルに当てられるだけ、ときにはオーバーにふっ飛ばされて転がったり、いろんなパターンがあるわけです。それを短期間で全部学びました。

――ちなみに、『スタントマン 武替道』でいちばん大変だったアクションは?

 今回のアクションは『トワイライト・ウォリアーズ』に比べると、そこまで難しくありませんでした。とはいえ、心理的なところ、恐怖心との戦いが大変でした。例えば、7階建てぐらいのビルからジャンプするときの怖さをどうやって克服するのか? それはもう慣れるしかない(笑)。たとえ、安全なワイヤーで吊られていても、初めてビルの屋上から地面を見下ろしたときは、地球の引力を感じてとても怖い。そこから1回ジャンプして、2回3回と繰り返すうちに、だんだん恐怖がなくなっていく。恐怖とは、自分が勝手に考え出したりするものなので、とりあえずやってみることが大事なんです。

――本作で監督を務めた双子の兄弟、アルバート・レオンとハーバート・レオンは、『トワイライト・ウォリアーズ』では俳優として共演しましたね。『スタントマン 武替道』の現場ではどのような監督でしたか?

 監督によって、いろんな演出のやり方があると思いますが、今回のレオン兄弟は「どうしたら面白いシーンになるか、みんなで考えよう!」ということが大好きな監督でした。臨機応変で、いろんな人の意見や考えを採用してくれる。とてもオープンマインドな性格でした。『トワイライト・ウォリアーズ』でも、脚本やアクションに関して、現場で話し合って変えていくことが多かったので、これが香港映画特有のやり方と言えますね。だからこそ役者は、それに素早く対応できる瞬発力が重要だと思っています。

2025.07.26(土)
文=くれい響
写真=Olivia Tsang
ヘアスタイリング=Nick Lam @twotwo.hair @nickienick
メイク=Will Wong @wi11wongofficial