この記事の連載
フィリップ・ンさんインタビュー
テレンス・ラウさんインタビュー
自らのスタントマン時代を思い出すエピソード
――テレンス・ラウさんが演じたロン役は、フィリップ・ンさんの体験談がもとになったとも聞いています。
私がモデルになったのは分かりませんが、スタントマンになったばかりのときは、先輩スタッフのみなさんから、私の名前(伍允龍)から一文字取って「龍仔!(ロンくん)」というあだ名で呼んでもらっていましたね(笑)。
『スタントマン 武替道』の脚本を読んだとき、確かにロンの役は私の若いときの経歴や経験と似ているような気がしました。私がこの業界に入った二十数年前、香港映画界におけるアクション映画はピークを過ぎていました。そのときの辛い気持ちはロンと重なります。ただ、それは私だけでなく、同じ時期にこの世界に入った人はみんな同じ。だから完成した『スタントマン 武替道』を観た後には、「あのときは大変だったよね」と共感し合いました。

スクリーンに登場しない裏方の存在を知ってほしい
――そんな『スタントマン 武替道』の見どころを教えてください。
見どころはたくさんあって、先ほどお話したスタントマンの日常や大変さだけでなく、アクションも映像も素晴らしく、トン・ワイさんが演じる父親とその娘の関係性といった物語もよくできている。とても見応えのある映画だと思います。
香港映画界の現状を知る意味でも大切な一作ですが、特に注意深く見てほしいのは、アクション映画にしろ、アート映画にしろ、どんな映画においても、スクリーンには登場しない、いわゆる裏方として働いている人たちが苦労と努力をしているということ。彼らは観客のみなさんを楽しませるため、一生懸命にビジュアル的な効果を生み出しているのだから!
フィリップ・ン(伍允龍)
1977年9月16日生まれ。香港出身。7歳のときに渡米し、さまざまな武術を学ぶ。2001年に香港映画界入りし、俳優・スタントマン・アクション監督として、『スター・ランナー』(2003年)、『孫文の義士団』(2009年)、『悪戦』(2013年)、『ダブルフェイス 潜入者』(2019年)など、これまで50本近くの作品に携わってきた。王九(ウォンガウ)役を演じた『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(2024年、日本では2025年1月に公開)のメガヒットにより、さらに注目を浴びる。
『スタントマン 武替道』
1980年代、撮影中に危険なアクションシーンを強行したことでスタントマンを半身不随にし、映画業界を引退したアクション監督・サム(トン・ワイ)。その後、整骨院を営むサムのもとに、かつての仲間から依頼が舞い込み、数十年ぶりに映画制作に参加するも、今の現場はコンプライアンスが厳しく、リアリティを追求するサムのやり方に人気俳優のワイ(フィリップ・ン)らが反発。そんななか、若手スタントマンのロン(テレンス・ラウ)はサムをサポートし、撮影を進めようとする。
https://stuntman-movie.com/
7月25日(金)より公開
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2025.07.26(土)
文=くれい響