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「伝統を表現したい」人におすすめの盆栽3つ

◆黒松

 最もメジャーであり、「盆栽」という言葉を聞いたときに、多くの人が真っ先に頭に浮かべるのが「黒松」。長くツンツンと尖った葉が特徴で、広く流通しているうえ、若⽊も多いため、比較的安価に手に入るものも。松脂が多く曲げやすいので、好みの形に整えられる。

 お手入れする際の基本は「不等辺三角形」のシルエットをキープすること。太陽の光を好む黒松は上へ上へと生長するため、放置しておくと下の枝が枯れてしまう傾向が。「みどり摘み」「葉透かし」「芽切り」など、季節に応じて異なる⼿⼊れをすると⾒栄えがよくなる。

“鉢合わせ”のポイント

「あくまでも盆栽が主役であり、鉢はそっと引き立てる黒子のような存在。上方向に伸びていく黒松に意識が向くように、平らな形を選びました」(鈴木さん)

◆五葉松

 葉が五本ずつ束になって生えてくることからその名が付いた「五葉松」。黒松と比べると銀色がかった葉は短く、全体的に丸みがあり、ポップでかわいらしい。

 年間を通して日当たりと風通しの良い場所で置き、剪定は春頃と秋頃の年に2回行う。もともと高山に自生する植物で乾燥を好むため、水のやりすぎには注意が必要。

◆真柏

 黒松と並んで人気が高い「真柏」の正式な名称は「ミヤマビャクシン」。ヒノキ科の樹木で、高山や海岸に生息する。比較的育てやすく、年間を通じて日当たりと風通しの良い場所に置き、剪定にハサミは不要。芽が出るたびに、樹形に合わせて手で摘み取る。

 人気が高い理由の一つに、盆栽ならではの「神(ジン)」、「舎利(シャリ)」の表現のしやすさがある。「神」は木の枝が枯れて白骨化した状態、「舎利」は幹が枯れて白骨化した状態を指す言葉。あえて枯れた部分を造作することで、盆栽において重要な古木感、趣を表現している。

“鉢合わせ”のポイント

あよお金澤尚宣さんの鉢:「映えるより“居る”を大切に心がけて、土を感じる鉢を選びました。視線が自然と枝先へ伸びてくれたら嬉しいです」(鈴木さん)

十場天伸さんの鉢:「真柏の枝ぶりに呼応するように、釉薬の流れがある鉢を選んでみました。あえて色彩のある鉢を選びつつ、視覚的な調和を意識しています。(鈴木さん)

2025.07.24(木)
文=河西みのり