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映画と本がところどころでリンクしていく面白さ

――映画の脚本内容を知った上で執筆されたんですね。タニシさんは、映画にどれくらい関わっているのですか。ちょこっと出演もされていましたが。
僕は脚本作りの段階から会議に参加させてもらいました。大まかなストーリーを見せていただいて、そこに今までの経験や『恐い間取り』に書いた内容から、「こんな話もありますけどどうですか?」とか「ここに使えそうじゃないですか?」と、エピソードを提案したり。
本の執筆はその後だったので、なんとなく映画にリンクするような話をいくつか入れています。高知の「七人ミサキ様の家」の話にも、Snow Manの渡辺翔太さんが演じる主人公・桑田ヤヒロのキャラクターに関連するようなエピソードがあるので、よかったら探してみてください。
出来上がった映画を見て改めて思ったのは、桑田ヤヒロって、“事故物件に住むセンス”がある人なんだということです。
――どういうことでしょう?
映画を見た人は、「あれだけ恐い目に合っているのに、なぜ次々と事故物件に住めるのか?」という疑問がわくと思うんですよ。

――ヤヒロは映画のなかで4つの事故物件を渡り歩くわけですもんね。普通なら1軒で懲りると思います。いくら仕事でも。
彼は幽霊に心を寄せるような優しさがありながら、過去を振り返らないサバサバしたところがあり、ネガティブなものに引っ張られすぎない強さもあるから、いくつもの事故物件に住むことができるんです。僕をモデルにしたわけではないでしょうが、シンパシーを感じてしまいました。
――主演・助演以外のキャストも豪華でしたね。滝藤賢一さんやホラークイーンの佐伯日菜子さんの贅沢な使い方もさることながら、怪談界からは大島てるさん、田中俊行さんも出演されていて、そこもスクリーンのこちら側とリンクしているようで、テンションが上がりました。
エンドロールに出てくる僕の言葉は、実はこの本のあとがきと同じなんです。映画を見て「どういうこと?」と思った方は、ぜひ本を手にとってみてください。
2025.07.18(金)
文=伊藤由起
写真=志水 隆