この記事の連載
小池徹平さんインタビュー【前篇】
小池徹平さんインタビュー【後篇】
安心できるメンバーの顔ぶれに救われている

――ミュージカルナンバーを聞きながら、観客もいつのまにかXの正体に近づいていく……。そんな楽しみが味わえそうです。
小池 そうですね。たとえばXの妻となった谷口里枝が、「谷口大祐」と名乗るXに最初に出会った日を思い出す回想シーンと、その話を里枝から聞いた城戸がイメージするXでは演じ方が異なります。
城戸とXのデュエットでは、Xの正体を知りたい城戸が「おまえは、ほんとうはこういう人間なのか」と歌で問い、「僕に立ち入るな」とXが返す。そんな白熱したやりとりが描かれるシーンも登場します。城戸との距離感や、城戸が考えるXをどう表現していくかはまだこれから練っていきますが、どのシーンでどんなXを演じていけば、観客のみなさんに伝わるのかを考えながら、僕なりのXを作り上げていきたいと思っています。
――ジェイソン・ハウランドさんの音楽も楽しみです。
小池 ジェイソンさんのメロディーは、物語に登場する人物の心情にすごく寄り添ってくださっている印象があります。
ミュージカルで歌が始まるのは、たいてい感情が動く時ですが、人物の内面や展開にあわせて変化していくジェイソンさんの曲は、心の中に隠しきれない叫びや本音をメロディーで表現しているように感じます。お芝居のシーンでは淡々とセリフをしゃべっているのに、歌のシーンになると急に感情的になったりするので、その温度差も面白い。
まだ完成していない章良とのデュエット曲もこれからできあがってくるので、どういう曲になるんだろうと、僕も今からすごく楽しみです。

――城戸章良を演じる浦井(健治)さんとは『デスノート THE MUSICAL』(※以下デスノート)以来の共演です。久しぶりにご一緒されていかがでしたか?
小池 健ちゃんと共演するのは『デスノート』以来8年ぶりなのですが、そんなに間が空いているとは感じませんでした。というのも、僕と健ちゃんは共通の知人がいて、お互いの状況を聞いていたからです。今回再会した時も「健ちゃん、またよろしくね」くらいの感覚でした。
でも、本読みの時に健ちゃんのお芝居を間近で見た時は、懐かしい気持ちがわいてきました。健ちゃんと一緒に歌うデュエットナンバーは、『デスノート』のオマージュではありませんが、どこか懐かしさを感じる雰囲気があります。
ただ、『デスノート』と本作はまったく作風が異なりますし、役柄としても今回は健ちゃんと対立する役というか、交わらない関係性なので、懐かしい一方で新鮮さもあり、面白い舞台になると思っています。
――浦井さん以外にも、鹿賀丈史さんや濱田めぐみさんなど、『デスノート』のキャストが集結しています。
小池 それこそ人によっては「『デスノート』じゃないか」と思われてもおかしくないメンバーかもしれませんが、作品のテーマがシリアスで重い分、安心できるメンバーの顔ぶれに救われているところは大きいです。
ちょっとしたミニ同窓会のような雰囲気もありますが、ミュージカル界の第一線で主役を務めている方々と再びご一緒させていただけるなんて、贅沢な環境だなと、ありがたく思っています。ぜひご期待ください!
》【後篇】「明るく爽やかなイメージに悩んだ時期もあったけど……」あの名作ミステリーがミュージカルに!『ある男』で身元不明の「X」役を演じる小池徹平が辿り着いた境地
小池徹平(Teppei Koike)
1986年1月5日、大阪府出身。2002年にデビューし、ドラマ「ごくせん」、連続テレビ小説「あまちゃん」、映画『ホームレス中学生』など映像作品で活躍。12年からは舞台にも活動の場を広げ、『1789‐バスティーユの恋人たち‐』や『キンキーブーツ』で高い評価を得る。7月~ドラマ「DOPE 麻薬取締役部特捜課」(TBS)に出演中。

『ある男』
音楽:ジェイソン・ハウランド
脚本・演出:瀬戸山美咲
歌詞:高橋知伽江
出演
浦井健治 小池徹平 濱田めぐみ ソニン 上原理生 上川一哉 知念里奈 鹿賀丈史ほか
東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)2025年8月4日(月)~8月17日(日)
広島、愛知、福岡、大阪公演あり
https://horipro-stage.jp/stage/aman2025/

2025.07.15(火)
文=相澤洋美
写真=平松市聖
ヘアメイク=加藤ゆい(ヘアメイクフリンジ)