船を降りるなり世界は未曾有の事態に!

――日本で順調に結婚生活がしたんでしょうか。
それが真逆なんです! 私は、クルーズ会社の税関に関わる仕事に就いたのですが、そのとき関わっていたのが、最近、映画にもなった豪華客船。中でコロナがまん延してしまい、その対応に追われました。
初めて港からあの船に入ったのは私で、防護服を着て船内に入る様子がニュースにも映ったんですよ。
――えーっ! 波乱!
新婚なのに、ほとんど家に帰れないような生活が3カ月続きました。
その後、まだコロナ禍中に長女を、その後次女を出産して4人家族になって、さあこれから子育てと仕事の両立を頑張るぞー! と思っていた矢先に、会社の事情で会社を辞めることになってしまい……。夫もちょうど転職活動中だったので、いきなり収入がゼロになってしまったんです。
――イタリアンどころではないですね。
一方、夫はコロナでイタリアに帰れず、私はそれを横目で見ながら自分が得意な和食を作り続けていたのですが(笑)、だんだんかわいそうになってきて、ついに奮起しました。
だけど、失敗の連続……というかそもそも日本のイタリアンが本家と違うところがたくさんあることがわかったんです。
――例えばどんな?
お店でミートソースというかボロネーゼを注文したら、まっしろなパスタにソースがどんとのっているのが出てきたことがありました。
夫曰く、パスタにソースが絡んでない状態で出てくるなどありえない! と。
また、前篇で紹介したカルボナーラも、生クリームを入れたら「やめてくれーーー」と。

――日本で違うスタイルに落ち着いてしまってたんですね。
そう、それで夫に教わったり、イタリアの家族とオンラインを繫いで教えてもらったりして、夫がよろこぶ味を作ることができました。
2025.07.07(月)
文=CREA編集部
写真=橋本 篤