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稽古のあとはアメリカンドッグと日高屋。「夜のひとり飯」が癒し

――忙しい稽古の中でリフレッシュのためにしていることはありますか?

 心がキューっとなってしまうときに、家に帰ってアメリカンドッグを食べるんです。それがリフレッシュかな? 今、12時から20時ぐらいまで稽古をしているんですね。そうすると帰るのが21時。そのあと一人で日高屋でご飯食べている時間も好きですね。夜の一人飯、こんな楽しいんだなと実感しています。

――すごく楽しそうです! 思い悩んだりはしていないですか?

 そういうことはないですね。この仕事以外にも、デイリーのレギュラーの仕事がいろいろとあるんです。稽古をしながら、医療機器チームの話を聞いたり、京都に行ってお寺の住職の話を聞いたりと、もう頭の中はすごいことになっているんですが(笑)、全然大丈夫です。ぬるっと切り替えはできています。毎日フェードラの気分を引きずっているというわけでもないです。

――『CREA』の「1冊まるごと人生相談」号について、まわりから反響などはありましたか?

 完売という報告を受け、大変嬉しく思っています。もう、祭りでしたね。私たちは、求めてくださる人全員に行き渡ってほしいと思っていたので、本当にありがたいです。スーさんとも「よかったね」と話していました。

 私たちを表紙に起用してくださるなんて、こんな奇特な雑誌はないですよ。普通の“おばさん”二人が雑誌の表紙になるなんて、考えられないことですから。90年代に発売された人生相談特集号と見比べても、時代の変化を感じました。

――『CREA』夏号のインタビューで「お悩み相談」について堀井さんは、自身の経験や価値観からしかお答えできないという話をされていました。演劇のように役を演じるということは、自分の中に別人格をインストールすることでもあると思います。今回、役者として舞台に上がりますが、この経験は今後の「お悩み相談」に対するスタンスなどにも影響しそうでしょうか。

 指導のときに深作さんがよく「美香さんをフェードラとして出してほしい。フェードラになるわけではない」ということをおっしゃってくださっています。だから今回は、フェードラを自分の方に手繰り寄せながら表現しているところがあります。

 もちろん演技において、高度な俳優さんは自分と乖離した人物を演じたりすることもあると思うのですが、私はまだその域ではないので。そのことを分かっていて、深作さんは私として表現できるフェードラ役をくださったのだと思います。だからまだお悩み相談のときも、私という軸をずらしたり、変えることはないかな。実際、ほかの人になれるわけではありませんから。

2025.06.27(金)
文=綿貫大介
撮影=志水隆