「セリフを覚えるため、東京中を一日2万歩ほど歩きました」

――ご自身のアナウンサー経験が活きそうだと思う瞬間はありますか?
言葉の紡ぎ方や、言葉をちゃんと意味を持って出すというのは、自分の朗読でもやってきていることです。それは演劇においてもしっかり伝えられそうだなと感じています。
――言葉に身体性を持たせなくてはいけないのが、演技の難しいところですね。
やっと体がついてきた感覚があります。だんだん言葉が意識せずとも自然と呼吸するように溢れるようになってきました。やはり大事なのは台本を覚え込むことですね。それができてからはいろんなことがうまく回り始めました。
――台詞を覚えるのにはどれくらいかかりましたか?
私は朗読をする際にも覚えるようにしているので、記憶するのは得意な方なんです。それにしても今回は膨大な量で、一人で5分ぐらいしゃべる場面まで出てくるんです。そこで、今回に関しては、東京中を一日2万歩ほど歩きました。私は昔から体を動かしながら覚えるタイプなんです。お相手のセリフを全部入れた音声を聞きながら、そこに自分の声をかぶせて練習しました。
あとは睡眠学習ではないですが、眠りながら台詞を聞くというのをやりました。ただこれに関しては、意味があったかわかりません(笑)。むしろ、よく悪夢を見ましたね(笑)。日常的には常に台本と一緒に行動していました。電車に乗っていても、ご飯食べていても、脇には台本がある、という感じです。
――台本にはびっしりとメモ書きがされていますね。
ここに追記しているのは全部「深作語録」です。話された言葉を事細かにメモしているんです。私は割とロジックで解明するのが好きな人間なので、役についてや、演じるということを理解する一助になっています。
――今回のオファーを受けたときのジェーン・スーさんの反応はいかがでしたか?
「やれやれ!」です。もう(周りの人は)みんな応援団になってくれるんです。みんなで応援し合い、共に高みを目指しているような感覚なので、とても良いですね。
2025.06.27(金)
文=綿貫大介
撮影=志水隆