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カッコつけない。抗わない。無理しない。

――とがった時代はもう抜けたわけですね。

 いろいろ終わった自由なおじさんなので、無理はしません。オファーがくるということは、「奥田ならできる・やらせてみたい」と思ってもらえたということなので、まずは与えられた場で頑張るだけです。できなかったら2度目のオファーはないでしょうし。東京では、趣味のニュース、ゴルフ、クレーンゲーム、アイドルなどもすべて仕事につながって、自分の人生そのもので仕事をしている感じです。

 そういう仕事でより広い層に顔を知ってもらえれば、漫才のほうの注目度も多少は上がると思うんですよ。舞台に出てきた瞬間、この人知ってる!っていうのと、誰?から始まるのとでは、全然違いますから。知ってもらえていれば、序盤の自己紹介を削って、そのぶん、面白いネタを足せるじゃないですか。そういう漫才も作ってみたいしやってみたいですね。

――東京でも漫才が軸であることに変わりはない。

 そうしないと相方のよじょうが死んでしまうので。

――(笑)。

 ほぼ家族ですから。彼は「焦る」ということがない人なんですよ。僕一人の仕事が続いても、「じゃあオレ、休み取るわ」って趣味の狩猟に泊りがけで出かけたりして、全然危機感がない。そのままだと収入がゼロになってしまうので、漫才の仕事はコンスタントに入れてます。もちろん僕も漫才が好きだからですが、相方の生活がかかっているので、しっかりやらないと。

――今後の展望はありますか。

 今の世の中、テレビ番組に対する注目度も減っているなかで、看板番組のひとつを自分が持つというのは難しいかもなと思っています。でもいつかは、街を歩いていて、ちょっと人が集まるくらいには有名になってみたいですね。

 ひと昔前までは、みんなの趣味がテレビに詰まっていましたよね。ニュース、スポーツ、映画、お笑い……。だからみんなが同じテレビを見ていたけれど、いまはそういう時代じゃない。お笑いが好きな人は、お笑い番組だけじゃなく、好きな芸人が脚本を書いたトラマを見るとか、本を読む、SNSを見るとかいくらでも深堀りできるから、お笑い以外のものを見る時間がない。同じく、お笑いに興味がない人は、お笑いのことをまったく知らない。

 僕もいまだに、お笑いを好きな人にしか知られていないんです。今のテレビから昔の大スターみたいな人は生まれにくい構造になっているとしても、なんとかお笑いの枠を超えた知名度を手に入れたい。そうなることを目的にいろいろな仕事を頑張っていきたいです。

奥田修二(おくだ・しゅうじ)

1982年、兵庫県生まれ。2005年、よじょうと漫才コンビ「学天即」を結成。同年「M-1グランプリ」にてアマチュアながら準決勝進出を果たし、2007年より吉本興業に所属。2021年、コンビ名を「ガクテンソク」に改名。2024年には、『THE SECOND~漫才トーナメント~』にて優勝を果たす。趣味はゴルフ、雑学、アイドル、クレーンゲームなど。
奥田さんのポータルサイト:https://vir.jp/gakutensokuokuda

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2025.07.01(火)
文=伊藤由起
写真=佐藤 亘