大人気コミックエッセイ『つづ井さん』の最新シリーズ『とびだせ! つづ井さん』。「こういう生き方もあるよね」という温かいメッセージを込めた“絵日記”を描くうえで、つづ井さん自身が大切にしていることとは? 自分の作品が映像化されるという“大事件”の裏側にあったドラマについても明かしてくれました。
》【前篇】「アイドルグループの子から目が離せなくなって、映像を何度も巻き戻して、一時停止して…」つづ井に訪れた“推しにハマる瞬間”
“絵日記”にするエピソードの決め方

――『とびだせ! つづ井さん』2巻では、新刊発売のイベントでダンスをお披露目したり、ドラマ『つづ井さん』の撮影現場を見学したり、盛りだくさんな内容になっています。絵日記にするエピソードは、いつもどうやって決めているのでしょう。
楽しかったことや、自分が覚えておきたいこと、記録しておきたいことを、担当編集さんや絵日記に登場する方たちに毎回確認して決めています。なので絵日記にする可能性のありそうなことは、その都度メモしておくようにしています。友だちが言っていた言葉とかも、なるべくニュアンスを変えずに絵日記にしたいので。そして絵日記にするエピソードが決まったら、メモをもとにネーム(コマやセリフなどを大まかに表した下描き)に起こす流れになります。
――言葉のメモとともに、絵としてこの光景を描きたいというようなイメージもあったりするのでしょうか。
友だちがパワーワードを言ったときは、多分大きいコマで描くだろうなって思ったりします(笑)。ちょっと変な顔をしていたり、いつもと違う表情をしているときは、強く印象に残っているので、コマが大きくなったり、顔を大きく描いたりする方向に自然となっていきますね。

――長いこと習慣的に、日々の出来事を絵日記にしているからこそ、面白いことに遭遇したら、コマが浮かんでくるような思考回路になっていそうですよね。
たしかに、友だちの言葉を思い返してメモしているときには、ネームの形が半分くらい頭に浮かんでいるかもしれません。
何気ない出来事や気持ちを忘れないように残せたことへの喜び
――できあがってみて、ご自身でも特に満足感のある絵日記はどのようなものでしょう。

1巻だったら、“前世からの友”と集まって遊んだときのことだったり、2巻ではダンスをお披露目したイベントのことだったり、ページ的に比較的ボリュームのあるものをまとめられたときは、満足感がありますね。それとは真逆といえますが、スイカを初めて買ったときのようなささやかな日常の出来事も、描けたときは同じくらいの満足感があります。もしかしたら、私しか面白さを感じないかもしれないけれど、描いた意味があったと思えるというか。
――絵日記にしなかったら忘れてしまいそうなくらい、ささやかなことだったりしますよね。
家族や友だちに「こういうことがあってさ」と話したらそれで満足して、記憶から抜け落ちちゃうようなことなんですけど、何気ない出来事や気持ちを忘れないように残せたことへの喜びは、読み返したときにありますね。
2025.06.29(日)
文=兵藤育子