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 2025年4月5日土曜日、東京・青山ブックセンター本店にて『とびだせ!つづ井さん』2巻発売を記念したイベントが開催された。トークゲストは『霧尾ファンクラブ』の作者・地球のお魚ぽんちゃんさん。

 つづ井さんの『とびだせ!つづ井さん』は「生きてるだけで楽しい~!」日常コメディ。一方地球のお魚ぽんちゃんさんの『霧尾ファンクラブ』は、女子高生2人の恋心と友情を描きつつも、ユルさと緊迫感、ギャグとせつなさを兼ね備えた稀有な作品だ。地球のお魚ぽんちゃんさんとつづ井さんとの顔合わせは意外なような納得のような? コミックエッセイ作家とフィクション漫画作家のふたり、いったいどんな雰囲気のトークが展開されるのか。

 そしていよいよ期待がふくらむ満席の会場に、垂れ耳のかわいい犬の着ぐるみ姿のつづ井さんが登場。その手を取りながらステージ上にいざなうのは地球のお魚ぽんちゃんさんだ。仲のよさそうな2人の姿に思わず目じりが下がる。ゆっくりと歩を進める2人に、ギャラリーからの長い長い拍手が鳴り続けた。

 もともとは互いの作品のファンであったという2人。今では2人で花見に行ったりするほど仲よしなのだが、そんなときは照れもあってか漫画の話はしないそう。このイベントでは波長の合う友だち同士としてのおしゃべり、またリスペクトしあう同業者としての思いをたっぷり聞かせてくれた。1時間にわたるトークから、ハイライトシーンをご紹介しよう。

【後篇】「上裸の女性が飛び跳ねながら奇声を上げて入ってくると思いきや…」つづ井が『霧尾ファンクラブ』サイン会で目撃した意外な光景


『とびだせ!つづ井さん2』のココが熱い!

 イベント冒頭では、地球のお魚ぽんちゃんさんが『とびだせ!つづ井さん2』でもっとも印象に残ったエピソードを発表!

地球のお魚ぽんちゃん つづ井さんが人気男性アイドルグループの動画を流し見していて、突然メンバーのAくん(仮名)に心を奪われた、「“推し”誕生の予感」のエピソードです。これ、『つづ井さん』史上、かなりの大事件では。どんな気持ちで描いていましたか?

つづ井 これを描いているときもまだ混乱の渦中で。自分の中でもその感情の正体を咀嚼できていない感じでしたね。今も、いろんなことに驚く日々が続いてます。「アイドルを推すとこんなことがあるんだ」って。ずっと情報量の少ない俳優さんが「推し」だったのでギャップがすごくて。たとえばCDひとつとっても通常盤A、通常盤B、限定盤Aとか……いろいろあって、発売日にバージョン違いの同じCDが家に5枚届くわけですよ。「私、同じCD5枚買ってる!」って、笑っちゃうみたいな。

ぽんちゃん いっしょにお花見に行ったときにも、推しの話をいろいろ聞かせてもらいましたけど。アイドルを推す中でも、つづ井さんらしい視点がいっぱいあってホントに楽しいし尊敬しちゃうんですよ。「Aくんの映像を観るときは必ず運動をする」とか。

つづ井 あまりにも情報量が多いから、思うがままに摂取してしまうと供給過多で飽和してしまいそうで。刺激に慣れちゃいたくないなと思って。Aくんの姿を大事にかみしめるために、Aくんが汗を流すときは私も汗を流すと決めて。ライブ映像を観ながら筋トレすることにしたんですよ。

ぽんちゃん めちゃくちゃポジティブだと思う。Aくんを観ることに慣れてしまわないためにあらかじめ手を打つって、めちゃくちゃ前向きでいいなぁと思います。つづ井さんの性質が現れてるエピソードだなぁと。考え方や創造性がナナメ上でおもしろいなぁと。

つづ井 うれしいです。筋トレ、いっしょにやりませんか?

ぽんちゃん 私は運動をしたことがないから無理です! でも……つづ井さんは私の「推し」みたいなものだから。こういうのはどうでしょう。私は「つづ井さんがAくんを見ながら筋トレする姿」を見ながら筋トレするとか。「つづ井さんががんばってるから私もがんばろう」みたいになれるかも?

2025.06.07(土)
文=粟生こずえ
撮影=山元茂樹