この記事の連載

 最高齢の現役美容部員として、ギネス世界記録を更新し続けている堀野智子さん。

 『102歳、今より元気に美しく』(朝日新聞出版)には、堀野さんの考えや好きなもの、健康方法などといった“元気の秘訣”が紹介されています。今回は特別に、その一部を教えてもらいました。

【前篇を読む】「他人と比べてもいいことはない」わかっていても考えてしまう悩みはどう対処すべき? 102歳の現役美容部員・堀野さんが答えます


いつもご機嫌でいるための方法

 朝一番にお化粧をすることで体と心に「活」が入り、気分が上がります。

 でも私にはお化粧以外にも自分の気持ちを引き立ててくれるものがあります。よく人様から「堀野さんはいつも明るく元気でいいね」と言われるのは、そのおかげかもしれません。

 好きなものを持つというのは自分を楽しませ、自分自身の「ご機嫌を取る」ことにもつながっていくと思うからです。

 人様の顔色を気にする人は多いですが、自分のご機嫌を取る人はあまりいないのではないでしょうか。

 でも本当にご機嫌を取るべきは人様ではなく自分自身だと思うのです。だって一番長く親密に付き合わなくてはならないのは自分自身だから。

 それに自分が機嫌よくいることを中心にすえれば、おのずと他人の顔色は気にならなくなっていくでしょう。

 中には「あの人、いつも楽しそうで気に食わない」という人もいるかもしれませんが、ほとんどの人は不機嫌な人よりも上機嫌な人といるほうが気分はいいと思います。

 こと自分のご機嫌を取ることに関して、私は「達人って言ってもいいんじゃないか?」と自負しています。

 おしゃれと手仕事が好きで食いしん坊なので、かわいいものやきれいなものに触れたり手を動かして何かを作り出したり、おいしいものを食べられたりすればそれで幸せなのでね。

 その根底にあるのが「今のことしか考えない」ということにあるように思います。

 先のことなんて誰にもわからないので長期的な目標を持つこともありませんでしたし、起こったことは変えられないので過去のことをいつまでも後悔しないようにしてきました。

 「今」がよければそれでよし、というのが私の基本的な考え方です。

 だって厳密に言えば、人には常に「今」しかないからです。過ぎた時間は取り戻せないですよね。

 また、漠然と自分には明日も明後日もあるような気持ちになっていますが、実は一瞬先のことだってわかりません。

 早くに母を亡くしているせいか、若いころから人の寿命というのは決してわからないものだと思って生きてきました。

 「今、楽しまなくてどうするの?」が私の根幹にあるのだと思います。

 だからできるだけ機嫌よくしていたいんですね。不機嫌でいるのって、周りの人をハラハラさせもしますが、誰よりも自分が一番苦しいのではないかと思うのです。

 苦しみ続けるなんてとてもできそうにないので、だったら楽しいことを考えて自分で自分のご機嫌を取ってあげよう、というのが私の考え方です。

2025.06.15(日)
文=堀容優子
写真=馬場岳人(朝日新聞出版)