この記事の連載

 喫茶文化が根付く名古屋で愛されている「カフェタナカ」。約60年前に喫茶店から始まり、自家焙煎コーヒー店を経て、現在はカフェ&パティスリーとして、グランシェフ パティシエ 田中千尋さんを中心に心躍るスイーツを生み出しています。

 カフェタナカと言えば、クッキー缶を想像する人も多いでしょう。人気のクッキー缶は、限定のものとなるとあっという間に完売してしまうことも。書籍『CAFÉ TANAKA PHILOSOPHIE 幸せのティータイム』より、クッキー缶誕生の背景や、こだわりを抜粋してご紹介します。

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多彩で奥深い味、香り、食感

 クッキーは、小麦粉、バター、砂糖をメインとするごくシンプルな素材でつくられます。にもかかわらず、さっくり、ほろり、しゅわりといった様々に異なる食感や、卵や木の実、スパイス、ハーブなどほかの素材との組み合わせで多彩な味わいを表現できるのが、クッキーの大きな魅力です。(グランシェフ パティシエ 田中千尋・以下同)

 私が大切にしているのは、フランスの伝統的な技法を守りつつ、素材ひとつひとつを大事にして無駄に手をかけず、丁寧な手仕事を重ねることです。

 シンプルとはいえ単に混ぜればできるわけではなく、手の加え方が少しでも違えば、食感はもちろんのこと、焼き上がったクッキーを噛みしめたときの味や香りの立ち方、余韻の広がりまでまったく違うものになってしまう。

 そこに、クッキーをつくる難しさと追求する楽しさがあります。

 いつも心がけているのは、一枚一枚心を込めて丁寧につくること。シンプルであるからこそ本当に奥深く、バリエーションがどこまでも広がっていき、味覚の探求が尽きることはありません。

2025.06.22(日)
文=カフェタナカ
撮影=北川 鉄雄