長年付き合っている彼女との関係に不安を感じ、浮気に走ってしまう26歳のマサムネ。その「沼男」の目線から描かれる、アラサー世代のリアルな恋愛模様を描いた『幸せになりたいマサムネ君』(ヨネマイ著・文藝春秋)が、SNSを中心に大きな話題を呼んでいる。
同人誌として発表された作品を商業連載化したこの漫画は、「クズ男」の内面をあまりにも生々しく描き出し、読者から「共感しすぎて吐きそう」「全員が傷つく未来しか見えない」といった声が殺到。その圧倒的なリアリティはどのように生み出されたのか。担当編集者に話を聞いた。

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「生身の人間が動いている感」を大切に
「同人誌版の冒頭は『浮気もの漫画』に分類されるような展開なのですが、浮気をドラマチックに仕立てた物語じゃなく、本当に『リアルで素朴な浮気』なんです」と担当編集者は語る。

「テンポ感も独特で、漫画として面白くなるようにスピード感を上げたりなどあまりしていないんですよね。その分『生身の人間が動いている感』があって、共感性が増しているんです」
同人誌から商業版への描き直しにあたっては、作者ヨネマイさんの独自の良さを損なわないよう、従来の漫画のセオリーにはめ過ぎないことに気を付けたという。

作中のキャラクターたちの魅力について、担当編集者はこう語る。
「キャラクターの解像度がめちゃくちゃ高いんです。マサムネは『26歳。身長178.5cm。細身で長身だが180cmに届いていないことをたびたび自虐的に語る』。モモカは『26歳。中2でバレエを辞めたあとはしばらくガニ股がひどく、お父さんが一生懸命注意して直った』。〇〇子は『22歳。“パパ活してそう、ガールズバーで働いてそう”と言われがちだが、そんな度胸はない』。いる~、こういう人いるいる~、と」
2025.05.21(水)
文=「文春オンライン」編集部