古くから人が行き交い、海運、陸運ともに、交通の要所として栄えてきた広島県尾道市。「北前船」がもたらした富によって整備された街並みは、西の小京都とも称され、多くの人々を魅了してきた。

 尾道水道沿いを臨む夜景も坂の街・尾道を訪れたなら堪能したい景色のひとつ。そんな絶景を臨む、尾道随一の眺望を誇るホテルがこの春、誕生した。その名も「尾道倶楽部」。

 そこは、上質でありながら、交通の要所・尾道らしく多くの人々が集う、快適さに満ちたホテルだった。

長年地元に愛されてきた千光寺山荘が世界中の人を招き入れる宿へリニューアル

 尾道倶楽部は尾道駅や新尾道駅からは車でおよそ10分、千光寺のすぐ近くの丘の上に佇んでいる。元々は千光寺山荘として60年以上、地元に愛されてきた宿だが、コロナ禍の影響もあり、2024年に営業を断念。

 尾道の象徴を残そうと、瀬戸内の魅力を活かした観光地造成に取り組む(株)瀬戸内ブランドコーポレーションと放送作家としても知られる小山薫堂氏などが手を挙げ、多くの人に愛されるホテルへと2025年3月31日にリニューアルした。

コンセプトは「尾道を目に宿す、宿。」

 宿のコンセプトは「尾道を目に宿す、宿」。

 尾道水道の流れに沿って発達した、尾道ならではの街並み。商人たちによって守られてきた寺町。坂道や小道が行き交う、どこかほっとするような風景。今となっては懐かしいけど新しい景色を目に宿し、そして心に刻み付けてほしい、というメッセージが込められている。

 コンセプトを象徴するように、宿の中には客室内を含め、フォトグラファーの写したさまざまな風景が展示されている。「ああ、あの風景だ」と旅路を振り返ったり、まだ見ぬ尾道の風景を探しにいくきっかけにしたり。尾道探索の拠点にふさわしい。

2025.05.17(土)
文=CREA編集部