そして夜7時頃、ようやく無痛分娩の麻酔が再開されました。
助産師さんの「鼻からゆっくり吸って~」「口から細くゆっくり吐いて」「はい、いきんで!」という言葉に合わせて、何度かいきみにトライしました。
だけどやっぱり、出てこない。すると先生が意を決したように……。
「吸引します! 吸引分娩にします!」
と宣言。気がつくと10人以上の医療スタッフに囲まれていて、あわただしく準備が進められていきました。そして腕まくりをした先生が「頑張りましょう」と言って、私のお腹に全体重をかけて、ギューッとのしかかってきたのです。
「ぐるじい! 重い……!」
息もできないし、その圧で目玉が飛び出るかと思いました。こんなの聞いてないし、ドラマでも見たことないんですけど……!?(当たり前)。思わず目をつむると「目をつむっちゃダメ!」「おへそのほうを見て!」と。私も必死だけど、先生たちも必死。
3500gの男の子を出産
これを何回か続けたのち、
「はい、頑張って! 次で赤ちゃんを外に出してあげましょう!」
その直後、
「頭出ました! 体が出てきましたよ。はい、生まれましたよー!」
ぽぽちゃんが生まれた瞬間、呆然と天井を見上げたのは覚えています。声も出ず、放心状態のなかで、ふと産声が聞こえてこないことに気づきました。
私が「あれ?」って思ったのが先か。ぽぽちゃんが「おぎゃー」って泣いたのが先か。とにかく泣き声を聞いた瞬間、目から涙がつーっと流れました。それからすぐ私の顔の横に連れてきてもらえた小さな命。あなたがお腹の中にいたのね……。そのときはまだ信じられない気持ちでした。
こうして11月13日、夜9時41分、ついに私は3500gの男の子を出産しました。
ぽぽちゃんとの写真を撮影してもらった直後、黄疸(※新生児の黄疸は、血液中のビリルビンという物質が増えることで皮膚や目が黄色く見える状態)が出ているためNICU(新生児集中治療室)に入ることに。安堵したのも束の間、心配で不安でたまりませんでした。
2025.05.06(火)
文=あいり