会った途端に「あ、駒子や!」

――大人になってからの物語が繰り広げられるなかで、映画オリジナルのキャラクターが複数登場します。ファーストサマーウイカさんが演じる、兄妹の幼馴染でお好み焼き屋の看板娘の駒子もそのうちの一人です。

朱川 京都の撮影を見学させてもらったんですが、みなさんの演技の爆発力がすごかったです。直接お会いしたのは鈴木さん、有村さんと鈴鹿(央士)さん、ファーストサマーウイカさん、オール阪神さんでしたが、みなさんぽーんと話に勢いをつけてくれるというか。特にウイカさんはそういうところがあると思うんですよ。見方によればただの大阪の姉ちゃんなんですが、こういう姉ちゃんがいるから、いい。

前田 キャスティングにおいてもウイカさんと(鈴鹿)央士くんは早い段階から決まっていましたね。会った途端に「あ、駒子や!」となりました。

――そんなウイカさんたちの姿を見て、新たな物語が生まれたと聞きました。

朱川 撮影現場が「書きたくなる」空気に満ちてたんですよ。

前田 うれしいですね。

朱川 『花まんま』の着想元として、金子みすゞさんの「花のたましひ」という詩があります。その最後の一行に花は散った後も子供のままごとのご飯になるというところがあって、そこから弁当箱にお花が詰まっている「花まんま」をイメージして書いたんです。そして『花まんま』には書けなかったですが、いつか金子みすゞの詩で言われているような、何でも人にあげちゃう人の話を書きたいと思っていたんですよ。その人のイメージは何となくできてたんですけど、この人を動かすにはどうすればいいかなって答えが出なくて。

 ウイカさんが演じる駒子に会った時に、その答えが見えました。「こんな姉ちゃんがおったら、全部連れてってくれるやん」って。ちゃきちゃきと引っ張っていってくれるキャラクターがいれば、書きたかったキャラクターも書けるとわかったんです。

――そうして生まれたのが書き下ろしの新刊『花のたましい』の表題作「花のたましい」だったんですね。

朱川 ウイカさんが演じてくださった駒子を視点人物に、映画よりも少し前の時点のお話を書きました。智美という腐れ縁の幼馴染とのちょっと切ない物語です。そうして書いてみると、駒子の横にいた、オール阪神さん演じる三好のおじさんの子供時代も書きたくなって、どんどんどんどん広がっていきました。

2025.04.28(月)
文=第二文藝部