――2篇目の「百舌鳥乃宮十六夜詣」ですね。
朱川 オール巨人さんも主人公・俊樹の勤める工場の社長役でご出演くださっていますが、オール阪神さん演じる三好のおじさんの話を書くなら、そちらにも出てきてもらわないとと。僕の中でお二人を別々にするという考えはなかったので(笑)、子供のころからの友達という設定にさせてもらいました。僕らしい不思議なお話になったと思います。
3篇目の「アネキ台風」は、『花まんま』の主人公・俊樹が“アニキ風”を吹かせるタイプなので、それなら対比として“アネキ風”を吹かせる主人公も書きたいなと思って書きました。

何よりの賛辞をいただいたような気持ち
――4篇目「初恋忌」はそれまでの3篇と比べるとちょっと独特な作品ですよね。
朱川 『花まんま』にはある事件で若くして亡くなった女性・繁田喜代美が登場します。小説では喜代美の過去についてはあまり書かなかったけれど、もちろん彼女にも子供時代があって、彼女のことが好きな男の子とかもいたんだろうなと思って。それを今回書いてみようと思ったんです。
前田 僕は「アネキ台風」と「初恋忌」が特に好きでした。実は映画製作中に、喜代美(演・南琴奈)の成人式の写真も撮ったんですよ。結局映画には入れなかったんですが。「初恋忌」を読んだら入れておいてあげたかったなと思いました。
朱川 そんなものも用意してたんですか! たしかに見たかった気持ちにもなりますね。
前田 朱川さんと同じで、喜代美にもちゃんとそういう時代があって、みんなで成人式をお祝いしたりした思い出があったっていうことを映画で描けたら、繁田家も救われるんじゃないかなと僕も思っていたんですよね。
先ほど朱川さんが映画を見て「幸せな気持ちになった」とおっしゃいましたが、それはこちらも同じで。僕らが作った映画への返答として、こうして新しい物語を本にしてくださったというのが、何よりの賛辞をいただいたような気持ちです。次に何を返せばいいのかなと思うくらい。物語を書くってものすごくエネルギーが要るし、情熱も必要じゃないですか。だからもう驚きでしたし、出来上がったものを読んでみんなしてダーッて泣いて感謝感激雨霰でしたよ(笑)。
朱川 ありがとうございます。映画と小説、どちらにも触れることで、あの世界がもっと広がってくれたらうれしいですね。

映画『花まんま』情報
■2025年4月25日(金) 全国公開
■キャスト:鈴木亮平 有村架純
鈴鹿央士 ファーストサマーウイカ 安藤玉恵 オール阪神 オール巨人
板橋駿谷 田村塁希 小野美音 南 琴奈 馬場園 梓
六角精児 キムラ緑子 酒向 芳
■原作:朱川湊人『花まんま』(文春文庫) ✿第133回直木賞受賞
■企画協力:文藝春秋
■監督:前田 哲(『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『そして、バトンは渡された』『九十歳。何がめでたい』ほか)
■脚本:北 敬太
■イメージソング:AI「my wish」(UNIVERSAL MUSIC / EMI Records)
ⓒ2025「花まんま」製作委員会
小説『花のたましい』情報

■2025年3月24日(月)発売
■定価:1650円(本体1500円+税10%)
■全4篇収録(「花のたましい」「百舌鳥乃宮十六夜詣」「アネキ台風」「初恋忌」)
■ISBN:978-4-16-391952-2
■詳しくはこちらから


花まんま(文春文庫)
定価 836円(税込)
文藝春秋
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花のたましい
定価 1,650円(税込)
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2025.04.28(月)
文=第二文藝部