暮らす場所は自分の個性の一つ

 ある日、初顔合わせのスタッフが多い撮影現場で、「最近郊外に引っ越して、早朝ロケに出てくるのがホント大変で」とついこぼすと、誰かが「郊外ってどこですか?」と聞いてきました。松戸です、と答えると、「年1回、松戸にお墓参りに行っていますよ!」と別の誰かが言い出し、他にも「松戸の始発って何時?」「学校が柏だったから、松戸は電車で通過してました」「大学で松戸から通ってる友だちがいたなぁ」……などなど、急に話題が盛り上がって、びっくり。

 さらに「なぜ松戸に引っ越したのか」という話から、子育ての大変さや、一度離れたからこそわかる地元の魅力、働き方の選択についてなど、はじめましての間柄でも、短時間で相手の価値観がのぞけるようなコミュニケーションが自然に生まれ、その信頼感や安心感が、仕事にもよい影響をもたらした感覚がありました。

 考えてみれば、誰にとっても「どこに住むか」は大事な問題です。その土地を選んだのには必ず理由や背景があって、だから住んでいる場所を知ることは、相手のプロフィールをより深く立体的に知ることにつながると思っています。

 14年間も世田谷に住んでいたのに、引っ越して1年足らずで「松戸の人」としてすっかり認知されるなんて、なんだか不思議でしたが、それから10年以上が経ち、エッセイストと名乗るようになった今も、暮らす場所は自分の個性の一つと捉えて、文章や話に盛り込むようにしています。

 もう一つのポイント、「年齢を自分から明かす」については、人によって賛否が分かれるであろうことは前提でお伝えします。初対面で年齢を聞いたり、やたらと歳を気にするなんて日本人くらいだ、という批判もよく聞きますし、もちろんわたしも、自分の年齢をわざわざ言いたくない人にこの方法をすすめるつもりはありません。

2025.04.02(水)
文=小川奈緒