強迫性障害による潔癖症を患い、大切な恋人にも指一本触れられなくなってしまった絵本作家──。新堂冬樹の純愛小説を映画化した『誰よりもつよく抱きしめて』で繊細な主人公を演じるのは、俳優であり、「BE:FIRST」のメンバーとしても活躍する三山凌輝。「自分とは正反対」という役柄に、いかにアプローチしたのか。

自分とは対照的な印象の役
──三山さんといえば、最近ではドラマ『虎に翼』で熱血漢を演じたり、アーティストとしてステージ上で躍動したりと、「陽」のイメージが強いですが、本作の主人公・良城は、それとは対照的な印象の人物です。良城役をオファーされたときの率直な感想は?
三山 自分とはかなりイメージが違う役だな、とは思いました。恋人との向き合い方が不器用な面もあったり、もどかしく感じることが多かったですね。ただ、まったく良城を理解できなかったかというとそんなことはなく、僕にも人間としての振れ幅というか、ナイーブな部分は当然ありますから。この映画を撮影した時期に、自分もいろいろな物事について深く考えてしまう繊細なメンタルだったという偶然も重なり、意外とすんなり役に入っていけた気がします。

フォーカスすべきは病気そのものではない
──強迫性障害による潔癖症はどのように表現しましたか。
三山 症状について調べたり、動画を見たりしました。プライベートでも「良城のような潔癖症の人は、こういうときどうするのか」と考えて生活するうちに、ドアノブに触るにも素手ではなくシャツの袖を使うようになったり。でも、この作品でフォーカスすべきは病気そのものではなく、「わかりたいのにわからない」「わかってほしいのにわかってもらえない」という、誰もが抱いたことのある感情だと思ったので、それをどう表現するかに注力しました。
──恋人に触れたいのに触れられない良城が「久しぶりに、手つないでみる?」とおそるおそる尋ね、手を差し出すシーンが切なくて、なのにチャーミングですごく良かったです。
三山 あのシーンは手を震わせるべきか、シンプルにすっと差し出すべきか迷って、内田英治監督にも相談したうえで、現場で後者を選択しました。
2025.03.01(土)
文=岸良ゆか