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シリウスとの最後の2日間のこと「20歳以降いちばん泣きました」

 体調が回復してからは走り回ったり、いたずらするくらい元気でした。けど、気づいた頃には走らなくなっていたというか。ライオンがゆっくり歩くような感じで、のそのそと歩いて、ソファに登るためにちょっとだけジャンプするくらいになりました。

 亡くなる1、2年前、うしろ脚がおぼつかなくなってお尻が床に擦ってしまうようになりました。その症状は半年に1回くらい出てたんですけど、病院に連れて行っても原因がわからなくて。今思えばそれが老いの始まりだったのかもしれないですね。少し経って、その状態が常に続くようになりました。

 そして、亡くなる2日前にほとんど動けなくなりました。トイレもできなくなったので、病院に連れて行って。緊急だったのでかかりつけの病院じゃなかったんですけれど、僕らが帰ろうとしたら先生が道まで追いかけてきてくれて、封筒を渡してくれたんです。その日診たところを細かく書いてくれたものでした。先生はもう長くないことがわかっていたんでしょうね。

 病院から帰った翌日からまったく動かなくなりました。奥さんと覚悟を決めて、ずっとシリウスと一緒にいようと話しました。それが23時くらい。奥さんは翌日仕事もあったので交代で寝ながら朝までずっと見守っていました。

 翌朝10時くらい、僕が起きているときにシリウスが急にげほげほと言い出したので、すぐに奥さんを起こしました。僕が抱っこしているときに、シリウスはごほごほと咳みたいなものをひどくしてから静かになりました。

 「まだ息があるかもしれないから、抱っこしてあげな」って奥さんにシリウスをあずけた瞬間、おしっこが流れて、力が抜けたんだなって。あぁ、こんな感じでいっちゃうのかって思いましたね。

――最期、2人で見送れてよかったですね。

 そうですね。僕、20歳以降で一番泣きました。できるだけいい思いをして過ごしてほしいなと思っていたので、シリウスと一緒にいる時間をとても大事にしていたんです。すごく濃厚な6年だったので、いなくなってから、うわ、これがペットロスなのかと実感しました。

2025.02.22(土)
文=高本亜紀
撮影=鈴木七絵