台湾は、生理先進国と言われています。その背景には、世界唯一の月経博物館「小紅厝月經博物館」の存在や、世界に先駆けて2002年に生理休暇を法制化、2023年からは生理の教育を導入するなどの動きがあるからです。そして、アジア初の吸水ショーツブランド「ムーンパンツ」が2018年に誕生したことも、台湾の生理を変えたと言われています。
なぜ、台湾は社会全体で生理への取り組みが行われるようになったのでしょうか。「ムーンパンツ」の共同創設者であり、その開発の舞台裏を知ることができる書籍『生理を、仕事にする。台湾の生理を変えた女性起業家たち』(アジュマブックス)の共同著者である、ユアンイーさんにお話を伺いました。
2000年代初頭は未婚女性へのタンポン使用について注意喚起されていた…
――生理教育の普及や生理用品の発展には、それぞれの国の文化や風潮が影響してくると思います。台湾が生理先進国と言われるようになるくらい、政府や社会が動くようになったのはなぜでしょうか。
台湾には保守的な文化があります。そのため、生理にまつわることは友達ともあまり話をしない、恥ずかしくて言えないという風潮は長く続いていました。オープンに話せるようになってきたのは、ここ数年の話です。そのような変化が起きたのは、女性たちによる活動や口コミの影響が大きな要因になっていると思います。台湾の女性はけっこう強いんですよ。
――具体的にはどのような動きがあったのでしょうか。
さまざまな動きがありますが、例えば、「ムーンパンツ」の共同創設者であるフィオナさんは、生理や生理用品のことをブログで発信し、台湾製のタンポンブランド「Kirakira」を創設したヴァネッサさんと一緒に、「タンポンという生理用品があるんだよ」と、生理用品のことから生理についての知識・情報を一生懸命発信していきました。
その理由は、タンポンのパッケージには「未婚の女性はタンポンを使用する際に注意すること」や「医師の指示のもとでのみ使用すること」など、不安感を抱かせるような注意書きがあったり、台湾はウェブショッピングが盛んにもかかわらず、タンポンを購入することができなかったからです。
私たちの発信には多くの声が届くようになり、2009年にはパッケージの注意書きが撤廃され、2014年からウェブサイトで購入できるよう法改正が行われました。
また、2007年にエコな生理用品として布ナプキンが注目を集め、それまでフィンガータイプしかなかったタンポンですが、ヴァネッサさんによって2010年にアプリケーター付きが誕生。2018年には吸水ショーツブランド「ムーンパンツ」が誕生するなど、生理用品の選択肢が徐々に広がってきたことで、「もっと生理について学ぼう」という声がたくさん出てきました。
このような商業的な側面の活性化によって、地方自治体が経済的な理由などで生理用品を購入できない家庭の女性や遠隔地の女子学生に生理用品を無料配布、地方自治体が管轄する公共エリアで生理用品を無料配布するなどの活動が徐々に出てくるようになり、2023年からは全国の学校で多機能生理用品の無料配布が始まっています。多機能生理用品とは、使い捨てナプキンだけではなく、タンポンや布ナプキン、吸水ショーツ、月経カップ、月経ディスクも含まれます。そして、2023年9月から学校での生理の教育も始まりました(台湾は9月が新学期)。
さらに台湾では、生理に深く関係する、3月8日の国際女性デー、5月28日の世界月経衛生デー、10月11日の国際ガールズ・デーを記念日とし、毎年、地方自治体が生理に関する展示を推進し、生理に関心を持つ人々と共有する恒例行事が開催されます。
2022年に開催されたアジア初となる月経フェスティバルも、今では台湾全土で開催されるようになりました。このように、各地でイベントが行われるようになったことも、生理について話す機会の創出につながっていると思います。
2025.01.31(金)
文=木川誠子