この記事の連載

 インタビュー後編では『イザボー』から始まり、『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』、そして初のアルバムを出すなど、大忙しだった望海風斗さんの近況を振り返っていただきました。さらに最近のリフレッシュ方法やハマりものなど、望海風斗さんの“今”を大解剖! 普段なかなか伺えないプライベートのお話もたくさん話していただきました。


望海さんにとって、転換期となった2024年

――『マスタークラス』では、新しい“望海風斗”に出会えそうで嬉しいです。演じるのはマリア・カラスの晩年ということで、キャリアとしては下降してきた時代です。

 宝塚時代に『20世紀号に乗って』という作品を演じましたが、その作品も落ちぶれたプロデューサーという役柄でした。その時に、すごく眠れなくなっちゃったんです(笑)。男役で10年以上やってきたタイミングだったので、今の自分は自分なのか、プロデューサーのオスカー・ジャフィなのか、わからなくなって。

――演じている期間は、役柄が抜けないタイプですか?

 普段はそんなことないのですが、オスカー・ジャフィに関しては精神的にちょっと来ましたね。あれだけ人を笑わせていながら、自分の中では全然解決していない問題が山積みで……。「あれ、もしかして、これって自分の問題じゃないの?」みたいなことを途中から思い始めたら、もう居てもたっても居られない状態でした。

 私も年齢を重ねてきて、よいときばかりじゃないことも段々分かってきています。でもすべてが完璧なわけじゃないのが人生なので、自分の人生をどういうふうに進んでいくか、みたいなことをマリア・カラスからも教えてもらっている感じです。

 一番華やかな時期から少し落ちていったとしても、それは誰しもが通る道だと思うので。彼女の言葉のひとつひとつを読み進めていきながら、すごく勇気をもらいました。

――2024年に、何か新しく始められたことはありますか?

 パーソナルトレーニングに行き始めました! ジムというよりは自分の体と向き合ってボディメイクしていくみたいな、とても素敵なトレーナーの方に出会えたので、行けるときは週一ペースで通っています。時間を見つけて、身体と向き合う時間がすごく楽しくなりました。

 もともとは『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の再演のためにちゃんと体を作りたいと思ってスタートしたんです。それまでもピラティスに行ったりしていましたが、気持ちが途切れて、なかなか続けられなかったので、良いタイミングで先生にも出会えて本当に嬉しいです。

――望海さんにとって2024年はどんな一年だったのでしょう?

 真っ赤な一年でしたね(笑)。色で表現すると本当に真っ赤。『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』を2年やって、ひとつの大きな区切りがきたので、今年が変わり目だった気がします。

 オーディションから考えたら、すごく長い期間関わってきましたし、この作品という目標があったから退団後もずっと頑張り続けることができたと思います。それをやり終えたという達成感がすごく大きいですね。

 あとは『イザボー』というオリジナル作品に挑戦できたのも大きかったです。みんなで“未知”のところに冒険しにいく感覚というか、カンパニー全員で立ち向かったという達成感を『イザボー』では得ることができました。宝塚を辞めてからは新しく作るオリジナルミュージカルに参加する機会がなかったので、それも楽しかったです。

――望海さんにとって大きな手応えのあった『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』ですが、今振り返られて、成長を感じた部分や課題を感じたところなどはありますか?

 23年の公演が終わったときは結構課題を感じていたのですが、24年のスタートまでの間にアルバムでポップスを歌う機会もあったりしたので、悔しかったことがある程度解消された部分もありました。もちろん、歌に関してはまだ全然終わりではないですけれど。

 あとは芝居に対しても、24年の公演では『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の世界観を俯瞰して見られるようになり、いい意味で“こだわり”が減りました。みんなでボールを回し合ってるんだという感覚があって、すごく吹っ切れた部分があったんです。

 23年のときはショーアップされている部分と芝居とを「何とか繋げなきゃ」みたいな気持ちが強かったのですが、場面場面がちゃんと成立していたらいいんじゃないかと思い始めたらすごくラクになって。私の中では息がしやすくなりました。

――『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の打ち上げの様子も、いろんな出演者の方々のインスタグラムで拝見しました!

 すごく楽しかったです。まず、あのお忙しい井上芳雄さんが来てくださったのが、もう一番嬉しくて(笑)。打ち上げ会場がルーフトップだったのですが、夜空の下で開放感あふれるバーベキューが出来て、海外のようでした……。みんなに再会できたのが嬉しかったですね。あと、アブサンを飲みました(笑)。

2025.01.18(土)
文=前田美保
写真=榎本麻美