2019年に人間国宝・中村梅玉さんの養子となり、立役、女方の両方の役で活躍している中村莟玉さんは歌舞伎界の次世代を担う一人。NHKのラジオ番組「カブキ・チューン」ではパーソナリティーを務め、高いトーク力を発揮している。
そんな彼が歌舞伎以外の舞台に挑むのは、舞台『応天の門』。前回の朗読劇に続き、2度目となる。フレッシュでキラキラした笑顔の素敵な彼がこの挑戦への思いを語る。
歌舞伎ではやったことのないような役どころ
――舞台『応天の門』は漫画を原作としたもので、宝塚歌劇団でも2023年に上演されています。今回は脚本も、演出も異なりますが、宝塚歌劇団の舞台はご覧になっていますか? 原作を読まれた感想などもお伺いできればと思います。
宝塚版の「応天の門」はご評判が耳には入ってきてはいたのですが、残念ながら時間が合わず拝見はできませんでした。
原作は、今、まさに読ませていただいているところです。僕はもともとミステリーや謎解き系のストーリーが好きなので、楽しませていただいています。小さい頃から、親が買ってくる本も、江戸川乱歩とかコナンドイルの作品が多くてそれを読んでいましたし、アニメも『名探偵コナン』が好きでよく見ています。ですから、自分の好みにぴったりの作品だと思います。
――莟玉さんが演じるのは紀長谷雄(きの・はせお)ですが、この人物をどのように捉えていますか?
歌舞伎ではやったことのないような役どころなので、すごく楽しみです。おっちょこちょいですし、欲に負けてしまうタイプで、人にすぐ頼ったり、甘えたりするというおかしみのある三枚目のキャラクターです。歌舞伎で日頃演じているお役は普段の自分とはかけ離れているのに対して、今回の紀長谷雄というお役は、自分に近いものを感じています(笑)。
2024.12.07(土)
文=山下シオン
写真=佐藤 亘