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活気ある商店街を歩いて、ワクワクする本屋「Cava books」へ

 「ha ra」でほっと一息ついたら、再び町歩き。少し北、鯖街道の起点の方へ戻って、出町商店街へ行ってみましょう。

 出町商店街は京都でも有数の規模を誇る商店街。巷でいわれるシャッター商店街なんてなんのその。飲食店から雑貨屋、食料品店……。個性豊かな店がひしめく通りは多くの人で賑わっています。

 歩いていると、ついついいろんなお店で買い物してしまう、魅力溢れる商店街です。

 お目当ては映画上映施設・出町座、そしてその中にある本屋「CAVA BOOKS(サヴァ・ブックス)」です。

 店名の「サヴァ」は鯖街道のサバとフランス語の「Ça va」(やあ、といったような挨拶の言葉)から取ったもので、ここで出会った本がきっかけや出発点になったらという思いから名付けられたのだそう。

「他の書店ではやってなさそうな品揃えにするよう、心がけています。大学が近くにあるという土地柄もあって、文字量の多い、読み応えのある本が人気ですね」とは、店主の宮迫憲彦さん。

 約2000冊の本は、すべて宮迫さんがセレクトし、陳列しているのだそう。

 対談集の本などが好きだという井上さんもじっくりと本を手に取り、気になる本を探していました。「なんだか、誰かの家の本棚を覗いているみたい」と井上さん。それもそのはず「サヴァ・ブックス」では、面陳(表紙を見せる陳列方法)の形はとらず、すべて背表紙を見せる形で本が陳列されているのです。

「家で本を並べる時には、みんなこういう風に本を並べるじゃないですか。これが自然な本の佇まいなのかなと思いますし、タイトルだけで手に取ってほしい、という思いも込めてこういう陳列にしています」(宮迫さん)

 悩んだ結果、井上さんはいしいしんじさんの絵本『まあたらしい一日』を購入。「一日の始まりから終わりまで、いつどこでこの本を開いても、まあたらしい物語を届けてくれる本です」と大満足。

「本って、どこで買っても同じものではあるけど、こうして旅先で購入すると、その旅の思い出と一緒に持ち帰ることができるんですね。家に帰って読み返す時に、思い出がよみがえるのも素敵です」(井上さん)

2024.12.19(木)
文=CREA編集部
写真=佐藤亘