この記事の連載

「月経カップを使うようになってから、生理にまつわる面倒くささから解放された」。こう語るのは、視覚障害を持つパラ競泳選手の石浦智美さんです。その背景には、月経カップや吸水ショーツ販売するインテグロ株式会社のサポートがありました。

 生理においても「バリアフリー」を実現することはできないのか。石浦さんと、インテグロの代表取締役・神林美帆さん、同社の生理ケア&月経カップアドバイザーで元競泳選手の木下綾乃さんにお話を伺います。

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自分が感じている経血量と実際のデータに乖離が

――まず簡単に、インテグロの取り組みについて教えていただけますか?

神林 はい。2018年の事業開始以来、「女性ならではの健康課題によって社会活動が制限されることなく、誰もが自分らしく活躍できる社会をつくる」というミッションを掲げています。月経カップや吸水ショーツの提案に加え、教育ツールとしての女性生殖器模型の販売や、香川大学との共同研究「現代女性の月経量に関する研究」などもその一環です。

――月経量の研究、興味深いです。

神林 日本産婦人科医会では、正常な経血量を20~140グラムと定義し、それ以上を過多月経としています。このデータは50年以上前、生理用ナプキンの販売が始まった頃に、使用済みナプキンをもとに推計されたものなんです。

 当時の女性は、現代よりも生理が始まる年齢が遅く、出産回数が多かった分、生理の回数が少なく、ライフスタイルもかなり違っていました。そこで、私たちは月経カップユーザーに協力してもらって検証を行いました。

 その結果、正常とされる経血量には大きな差はありませんでしたが、私たちが注目したのは、多くの女性が、事前質問「あなたの経血量は?(多い・普通・少ない)」に対する回答と、実際の経血量が一致しないことでした。特に、過多月経が見過ごされると、婦人科疾患のリスクを見逃す可能性があります。

 生理は女性にとって健康のバロメーターでもあり、経血の色や量を把握することは非常に重要です。この研究から着想を得て、経血量が簡単に記録できる生理管理アプリ「Oh My Flow(オーマイフロー)」の開発を行いました。

2024.12.17(火)
文=河西みのり
撮影=平松市聖