スメタナの曲には、愛国心以上のものがある

パリにセーヌ。ロンドンにテムズがあるように。プラハにはブルタヴァが流れる。

 このオープニングで演奏されるのが、スメタナの交響詩「わが祖国」。第2曲はかの「ブルタヴァ(=モルダウ)」で、私たち日本人にもなじみの深いメロディ。音楽の授業で聴くだけでなく、商店街で流れていたりするのを耳にしたことがあるはずだ。誰でも聴けば、あぁこの曲かとわかるほどに有名な曲。プラハにいる間も、ほんと何度耳にしたことか。プラハでは、多くの教会でコンサートが毎日開かれているけれど、演奏リストに「ブルタヴァ」が入っていないことは、まずない。祖国を流れる川を、風景画を描くように表現したこの名曲は、万国共通で郷愁を覚えるメロディだ。

音楽尽くしのアリア・ホテルのダイニングで使われている皿は、音楽家たちの似顔絵が描かれている。こちらがスメタナ。

 元々この音楽祭は、チェコ・フィル創設50 周年を記念して1946年に開催されたもの。第二次大戦下、ナチの支配下から解放された国家復活1周年の記念の意味も籠められた。

 当時の指揮者ラファエル・クーベリックは、その後の共産党政権下に亡命し、1968年の「プラハの春」でのソ連の軍事介入、1989年のビロード革命を経て祖国に戻り、翌年の「プラハの春国際音楽祭」でチェコ・フィルとの歴史的再演を果たした。チェコの人にとってこの音楽祭は、いろいろな意味で“民族”を憶える音楽祭なのだ。

ブルタヴァ川縁はのどかな散歩コース。奥に見えるのが中世のカレル橋。

 「アラブの春」も、近国ウクライナにも、こんな春が巡ってくればよいのだけれど……。

今年のクロージング・コンサートは、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ヒラリー・ハーンのヴァイオリン、フランクフルト放送交響楽団演奏。ブラームスとドヴォジャークが演奏される。

大沢さつき(おおさわ さつき)
大好きなホテル:LAPA PALACE@リスボン
大好きなレストラン:TORRE DEL SARACINO@ソレント
感動した旅:フィリピンのパラワン島ボートダイビング、ボツワナのサファリクルーズ、ムーティ指揮カラヤン没後10周年追悼ヴェルディ「レクイエム」@ウィーン楽友協会
今行きたい場所:マチュピチュ

Column

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2014.04.29(火)
文・撮影=大沢さつき