世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第31回は、大沢さつきさんが訪ねた音楽のあふれる街、プラハについてのお話です。

チェコ人による、チェコ人のための、チェコの音楽祭

古都プラハの春は、ただ爛漫な春ではナイ。旧市街を包む柔らかな陽射しには、必ず、音楽が。

 春爛漫。2014年ももうすぐ5月……。

 去年取材したプラハは、もうすぐ「プラハの春国際音楽祭」で盛り上がる頃。今年は故国の作曲家、スメタナ生誕190周年、ドヴォジャーク(=ドヴォルザーク)没後110周年、ヤナーチェク生誕160周年とかで「チェコ音楽年」。いっそうのヒートアップが予想される。

旧市街広場の観光名所のひとつ、市庁舎のからくり時計。

 この音楽祭は今年第69回を迎えるという由緒で、世界三大音楽祭のひとつに挙げられるものだ。毎年5月12日のスメタナの命日にスタートし、3週間連日、各所でコンサートが行われる。世界中の音楽家が出演し、音楽ファンが集う一大イベント。バーンスタインが国際デビューしたのもこの舞台で、カラヤンも指揮したことのある音楽祭だ。

音楽祭のオープニング・コンサートが開かれる市民会館内のスメタナホール。その内装には、20世紀初頭のチェコの芸術家たちがこぞって参加した。

 中でも、市民会館のスメタナホールで行われる開幕コンサートは、入手至難のプラチナチケット。今年はプラハっ子のイルジー・ビエロフラーヴェク指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団演奏ということで、ジモティたちも大騒ぎの様子。プラハの春は、熱気に包まれているらしい。

スメタナホールのある市民会館入り口の上には、建国の女王リブシェのモザイク画が。

 この開幕コンサート、あまりの過熱ぶりのせいか、チケットを手に入れられないせいか、3日間行われる。同じ演目、同じ指揮者、同じオーケストラなのだが、それでもやっぱり5月12日は即完売。もちろん2日目、3日目のオープニング・コンサートも残僅少ということらしい。

スメタナホールの向かいにある市長ホールは、ムハ(ミュシャ)が内装を手がけた。キュートなステンドグラスも彼のデザイン。

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2014.04.29(火)
文・撮影=大沢さつき