現在のもっぱらの関心事は“娯楽映画”だ。「今の日本には商業映画や優れた作家映画がありますが、娯楽映画がないと思っています。そこに大きな映画の不在を感じます」と言う。

「なんというか、映画をもう少し“映画”に戻していくべきではないかと思っています。未だ戦争が続き、映画より凄まじい現実が隣り合わせにある今、現実がフィクションを超えてしまっていて、リアリティというものに限界を感じます。近年例えば『ジョーカー』(19年)や『バービー』(23年)といった作品が生まれていますが、そうした、大人が観られる真の娯楽映画が日本に必要だと思っています。これは自分の課題の一つとして、いつか結果を出したいなと考えています」

神ノ川智早=写真
FUJIU JIMI=ヘアメイク

いしい・ゆうや 1983年、山梨県生まれ。大阪芸術大学の卒業制作『剥き出しにっぽん』が高く評価される。10年の『川の底からこんにちは』で商業映画デビューし、史上最年少でブルーリボン賞監督賞を受賞。14年の『ぼくたちの家族』以降、多数の作品で池松壮亮を起用している。他に『月』『愛にイナズマ』(共に23年)など。

いけまつ・そうすけ 1990年、福岡県生まれ。子役として活動を始め、2003年、ハリウッド映画の『ラスト サムライ』で映画に初出演する。14年の『愛の渦』『紙の月』などの演技で日本アカデミー賞新人俳優賞など多数受賞。21年の石井裕也監督作『アジアの天使』でニューヨーク・アジアン映画祭のライジングスター・アジア賞を受賞。

INTRODUCTION
格差が拡大し、メタバースが日常化した近未来の日本。亡くした人をヴァーチャルに甦らせる事ができるようになったとき、人はどのように愛や命の意味を捉えるようになるのか─。平野啓一郎による『本心』(文春文庫/コルク)を、『茜色に焼かれる』(21年)、『愛にイナズマ』(23年)の石井裕也監督が、『シン・仮面ライダー』(23年)でも話題を呼んだ池松壮亮を主演に迎え、豪華キャストにより映画化。

2024.11.19(火)
文=稲垣貴俊