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「今日は良いものが撮れたね」という充実感が毎日あった

――「さよならのつづき」は、タイトル通りにさえ子と恋人の突然の別れから始まる物語で、そこから前向きになろうとする話ではあるけれど、悲しい影から逃れられない部分があります。そこに気持ちは引きずられることなく進みましたか?

有村 それは大丈夫でした。半年近い撮影の間、スタッフさんたちもずっと一緒にいたんで、早く終わった日にはみんなでご飯に行ったりとか、コミュニケーションを取る時間がたくさんあったので、みんなものすごく仲が深まったし、「今日は良いものが撮れたね」という充実感が毎日あったので、常にエネルギッシュな日々でした。

坂口 現場は本当に前向きでしたね。この作品に対してのみんなの思いが色々とあって、熱量の高いセッションのようだったんです。良い意味でディベートというか、このシーンはどうなのか、じゃあどうしようって、みんなで話し合って出来たので、風通しは良かったですね。

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――このドラマは心臓が過去の記憶を共有するというファンタジーの要素もあるけれど、同時に世界を股にかけるコーヒーハンターのさえ子の仕事や、成瀬の職場や妻のりんご農園など、日常も描かれます。北海道やニュージーランドの大自然が見事なだけではなく、さえ子が勤めるコーヒー輸入会社や、カフェ、空港、学校などの人工物の撮影にもこだわりを感じました。こうした撮影場所というのは演技にも影響しますか?

有村 そうですね。スタジオのセットに籠もって撮るよりはとても開放的になれるし、声のボリュームだったりとかも、自然と大きくなるような感じもあります。コーヒーのために世界中どこでも行く、さえ子らしい感じ。そしてドラマの中だけではなく、実際にロケをしていて、北海道の方たちに見守られている気がとてもしました。

坂口 場所の良さだけでなく、北海道の人たちはエキストラの方とか撮影協力の皆さんとか、本当に僕たちを心から迎えてくれる感じはすごくしましたね。こちらは撮影で皆さんが暮らしている場にお邪魔してるんだけど、歩いていると「昨日あそこでロケしてたんでしょ。頑張ってね」みたいな感じで声をかけられたり、とても皆さん大らかで、朗らかで。

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有村 それと今回、カメラマンさんがコーヒーを淹れる道具や食べ物とかの、“ブツ撮り”にもとてもこだわっていて。ちょっと綺麗すぎるくらい、綺麗なんです。でもそういう努力の甲斐が、映像に表れていると思います。

――お二人ともドラマの中では英語を喋るシーンがあってとても発音が綺麗でした。

有村 え、本当ですか? それは嬉しいです。通訳さんに一生懸命聞いて、覚えたんです。

――有村さんはスペイン語も喋ってましたよね。

有村 スペイン語は講習みたいなのをちょっと受けたんですが、難しかった。

坂口 とても自然だったよ。

【後篇に続く】「健ちゃんは、すぐに気が付かれちゃう」釜山国際映画祭で喝采を浴びた有村架純と坂口健太郎が釜山で感じたこと

有村架純

1993生まれ、兵庫県出身。2010年に「ハガネの女」でドラマデビューし、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)の好演で注目を集める。『映画 ビリギャル』(15)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞・新人俳優賞W受賞。同作と『ストロボ・エッジ』(15)で、ブルーリボン賞主演女優受賞。『何者』、『夏美のホタル』(16)で日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞新人賞受賞。連続テレビ小説「ひよっこ」(17)で橋田賞 新人賞、『花束みたいな恋をした』(21)で、日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞受賞。その他の主な出演作に、映画『コーヒーが冷めないうちに』(18)、Netflix映画『ちひろさん』(23)、ドラマ「「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(16)、「中学聖日記」(18)、「そして、生きる」(19)、「太陽の子」(20)、「姉ちゃんの恋人」(22)、NHK大河ドラマ「どうする家康」(23)、「海のはじまり」(24)など。公開を控えている作品に映画「花まんま」(25)、「ブラック・ショーマン」(25)がある。

坂口健太郎

1991年、東京都出身。2014年に俳優デビュー後、映画『64-ロクヨン-前編/後編』(16)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「シグナル長期未解決事件捜査班」(18)で連ドラ初主演を果たし、ソウルドラマアワード2021「アジアスター賞」を受賞。『ヘルドッグス』(22)で日本アカデミー賞 優秀助演男優賞受賞。その他の主な出演作に映画『今夜、ロマンス劇場で』(18)、、『劇場版シグナル長期未解決事件捜査班』(21)、『余命10年』(22)、Netflix映画『パレード』(24)、ドラマ「東京タラレバ娘」(17)、、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(21)、「婚姻届に判を捺しただけですが」(21)、「競争の番人」(22)、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22)「Dr.チョコレート」(23)、「CODE-願いの代償-」(23)。「愛のあとにくるもの」(24)では韓国ドラマに初挑戦した。

Netflixシリーズ「さよならのつづき」独占配信中

北海道のコーヒー会社に勤める菅原さえ子(有村架純)は、最愛の雄介(生田斗真)からプロポーズされるが、彼は交通事故で帰らぬ人に。その後、仕事で訪れたハワイの空港で、さえ子は雄介が弾くピアノにそっくりな音色を聞く。ピアノを弾いていたのは、雄介から心臓提供を受けた成瀬和正(坂口健太郎)だった。彼の妻ミキ(中村ゆり)は成瀬がピアノを突然弾けるようになったことに戸惑うが、それは成瀬自身も同じで――。

有村架純さん衣装

エンポリオ アルマーニ 173,800円(ジョルジオ アルマーニ ジャパン 03-6274-7070)

次の話を読む「健ちゃんは、すぐに気付かれちゃう」釜山国際映画祭で喝采を浴びた有村架純と坂口健太郎が釜山で感じたこと

2024.11.14(木)
文=石津文子
ヘアメイク=廣瀬瑠美(坂口さん)、尾曲いずみ(有村さん)
スタイリスト=壽村 太一(COZEN inc)(坂口さん)、瀬川結美子(有村さん)