この記事の連載

 チャンネル登録者数170万人以上を誇る大人気YouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」でおなじみ、タイタン所属のお笑いコンビ・春とヒコーキ。

 「バキ童」ことぐんぴぃさんと土岡さんは、ネットカルチャーをはじめとしたエンタメに造詣が深く、動画では時おりコンテンツのプレゼン大会が繰り広げられることも。熱を帯びた語り口に夢中になり、動画を観終わる頃には、「こんなに面白いものをなぜ今まで知らなかったんだ!」と今まで全く知らなかったコンテンツを焦りながらポチることに……。

 エンタメのインフルエンサーとしても頭角を現しているお二人を、「バキ童チャンネル」ヘビーウォッチャーのCREA WEB編集部員が直撃しました。


読者に合わせて作品を選んでこなかった

――CREA WEBにはマンガやカルチャーが好きな読者が多いので、エンタメに詳しいお二人におすすめをお聞きしようとお声がけさせていただきました。本日はよろしくお願いします!

ぐんぴぃ・土岡 (目の前に置かれた雑誌のCREAを見ながら)じょ、女性向け……?

――もしかして、どんな媒体の取材なのか伝わっていなかったでしょうか?(笑)

土岡 そうですね。全く読者に合わせて作品を選んでこなかったです(笑)

――(笑)。でも、純粋に面白い作品を教えていただきたかったので全く問題ありません! それでは、まずぐんぴぃさんから今特におすすめする作品を教えてください。

なんも切り開かない主人公

ぐんぴぃ ネットで「これおもろいよ」って評判になっている作品をチェックするようにしていて、出合った作品が鍋倉夫先生の『路傍のフジイ』(ビッグコミックス)。主人公は「フジイ」で、「路傍」っていう言葉のまんまのいわゆる窓際社員みたいな、中年の冴えない男。「あの人変だな」「あの人の人生ってつまんないんだろうな」って、みんなが馬鹿にしている存在。

 同じ会社で働いている田中は、「ああはなりたくない」って思いながらもなぜかフジイのことが気になっていて、そんな時に偶然フジイと街で出くわして家に行くことになるんです。フジイには、絵を描いたり、ギターを弾いたりする趣味があることがわかるんですけど、絵もギターもめっちゃ下手で。「なりたいものは?」って聞いたら「不老不死。……ですかね」って言うんです。実に取るに足らないやつ。

 今までこんなキャラをメインに据えた作品は見たことがなくて。「人より秀でてなくたって、普通の日常を楽しめればそれでいい」と説得力を持って言える主人公の作品、ちょっとこれはすごすぎるぞ!って。

――確かに、今までにない新しいタイプの主人公ですよね。

土岡 そうね。話を聞いてたら、なんも切り開かない感じでね。

ぐんぴぃ ははははは(笑)。そうなんですよ。なんも切り開かなくたっていいじゃないか! っていう。なんで何かを切り開かなきゃいけないんだって、そう思うだろう?

一同 (笑)

ぐんぴぃ そこがすごくいいんですよね。承認欲求みたいなものが全くないというか。最初は「こいつを馬鹿にしながら読む作品なのかな?」って読み始めたんですけど、最終的には「こいつになりてえ……」って全員が思う。今疲れてる人は読んだ方がいい。

2024.11.15(金)
文=ライフスタイル出版部
写真=佐藤 亘